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毎日新聞

チームの司令塔であるポイントガードとして磨き上げたパス技術について語るバスケットボール女子日本代表候補の吉田亜沙美=千葉県柏市で2020年2月26日、佐々木順一撮影

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変幻自在 バスケットボール・吉田亜沙美の「ノールックパス」

 得点への嗅覚、絶妙のタイミング、パスの受け手との信頼関係がかみ合った時、職人技が輝きを放つ。女子バスケットボール日本代表候補、吉田亜沙美(32)=JX―ENEOS=の代名詞ともいえる「ノールックパス」だ。視線の先はゴールリング、頭の中では瞬時にパスを出す相手を探す。その極意とは。【浅妻博之】

 シュートやドリブルと見せかけ、相手のディフェンスが自分に寄ってきた隙(すき)にパスを渡す。ノールックパスはダイナミックなプレーで観客の心をつかみ、流れを引き寄せる効果もある。吉田はこう解説する。

 「パスを狙いながらドリブルを仕掛けると視野が狭まるので、必ずゴールリングを見てシュートを狙う。ドリブルを仕掛けてもぎりぎりまで打たず、相手が来るタイミングを待ってパスを出す」。ディフェンスの動きを常に想像し、得点を狙いに来たと相手に思わせるのが成功の秘訣(ひけつ)だ。

 ノールックパスは吉田の原点でもある。幼少期にクラブチームでプレーしていた父の練習について行き、華麗な技に魅了された。「ノールックパスと(シュートの際に空中でフェイントを入れる)ダブルクラッチに衝撃を受けた。『まねして、人をワクワクさせる選手になりたい』と思った」。小学2年で本格的に競技を始め、中学、高校と父のノールックパスをイメージしながら磨き上げた。

 高校卒業後の2006年にJOMO(現JX―ENEOS)に入った頃は、パスミスが多かった。それでも「練習中は相手がとれなくてもあらゆるタイミングでパスを出し続けた。常に準備しておかないといけないと思わせたかった」と振り返る。狙い通り信頼関係ができると、「自分をずっと見てくれるようになる」と言う。

 日本代表でも長く活躍し、国際大会で海外勢にもまれる中でパスの引き出しは増えた。「上背のある選手に上は通せない。自分は小さいのでより低いところからパスを出せるため(ワンバウンドで通す)バウンドパスが有効」。16年リオデジャネイロ五輪では、6連覇した米国相手にバウンドパスを生かして前半は互角に戦った。日本代表に入って10年がかりでつかんだ夢舞台は主将として引っ張り、20年ぶりの8強入りに貢献した。

 女子Wリーグの18~19年シーズン終了後に現役引退を表明したが、「東京オリンピックの景色を想像してコートに立ちたくなった」と半年後に撤回した。再び日の丸をつける覚悟を決めた日本屈指の司令塔が、地元開催となる五輪のコートで躍動する。

吉田亜沙美(よしだ・あさみ)

 東京都出身。東京成徳大高3年時に日本代表に選出。卒業後に入ったJX―ENEOSでは1季目から活躍し、女子Wリーグの新人賞を獲得した。その後はチームで主将を務め、史上初のリーグ11連覇の立役者となった。あだ名は、勝利の流れを呼び込めるように「リュウ(流)」。ポジションはポイントガード。

浅妻博之

毎日新聞東京本社運動部。1982年、新潟市生まれ。スポーツ紙で校閲業務をして、2007年入社。山形支局、東京運動部、大阪運動部を経て、18年10月から東京運動部でテニス、バスケット、カヌーなどを担当。リオデジャネイロ五輪も現地取材して、テニス取材も全豪、全仏、ウィンブルドン、全米の4大大会を制覇した。高麗人参エキスを毎朝飲んで、健康維持を目指す。