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昨年10月の台風19号による県道崩落で苦境に立たされていた安中市の老舗旅館「金湯館」が2月、県道復旧を受け、営業を本格再開した。作家、森村誠一の小説「人間の証明」の舞台となった霧積温泉に残る唯一の旅館の再開に、常連客らからは「待ちわびていた」との声が上がった。
金湯館は1884年創業。台風で旅館につながる県道が崩落し、車両の立ち入りが不可能に。社長の佐藤淳さん(49)は「設備に支障はなかったが、県道再開のめどが立たず、廃業も頭をよぎった」と目を伏せた。
収入が途絶える不安もあり、転職も検討したが、「伝統ある旅館を自分の代で途絶えさせたくない」と決意を固め、徒歩で来られる登山客らの受け入れを始めた。
会員制交流サイト(SNS)に徒歩ルートや周辺の写真を掲載。ルート上にある林道の倒木を撤去するなどした結果、約30人が約3時間かけて訪ねて来てくれたという。
県道寸断中のキャンセルは延べ700人分に上ったが、SNSには「頑張って続けて」「再開したら行きます」といった言葉が寄せられ、妻の知美さん(49)は「励まされた」と振り返る。
本格再開直後に訪れた常連客の飲食業鈴木勝彦さん(52)=千葉県松戸市=は「湯の魅力だけでなく家族経営の温かみが残る旅館は貴重だ」とほほ笑んだ。