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論の周辺

ある和解と「木のスタジアム」

ひとの住処(新潮新書)の書影

 パルテノン神殿やピラミッドを挙げるまでもなく、さまざまな芸術の中で建築は最も大がかりで人の目に触れやすく、時代を象徴する存在となる。少なくとも近代以降は、建築家が同時に先鋭な文明批評家でもあった理由である。

 新型コロナウイルスの感染拡大で東京オリンピックの行方が心配されるが、メイン会場の国立競技場は既に完成している。どのような意味でも2020年を語る際の中心に、やがてこの建築は位置するに違いない。したがって設計者の建築家、隈研吾氏が書いた『ひとの住処(すみか) 1964―2020』(新潮新書)は、後代の歴史家の必読文献となるだろう。それ以前に、抜群に面白い読み物なのだ。

 どう面白いか。副題が示すように、著者は1964年と今年の二つのオリンピックを「補助線」に、戦後日本の現代史を「都市と建築」の視点から描き出す。都市は世界を股にかける現代建築家のアリーナだし、文明論の要だ。もちろん隈氏はそうした自覚と意欲のもとに執筆している。

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