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特集ワイド

予想外だった検事長の定年延長 怖いのは「国策不捜査」 ノンフィクション作家・森功さんに聞く

記者の質問に答える作家の森功さん=東京都千代田区でで2020年2月21日、藤井達也撮影

 メディアや野党の追及から「平気の平左」で言い逃れ、権力維持に腐心する安倍晋三政権に対し、霞が関官僚がこれに従う理屈とは一体、何なのか。政官財の闇に迫る作品を多数発表してきたノンフィクション作家の森功(いさお)さん(58)が「予想外だった」と驚くのは、東京高検検事長の定年延長である。【徳丸威一郎】

 東京都内の待ち合わせ場所で久々に森さんと顔を合わせると、かつて「兜町の風雲児」と呼ばれた中江滋樹氏(享年66)の話題になった。中江氏は1978年に「投資ジャーナル」を設立し、仕手集団を率いた。85年に詐欺容疑で逮捕され、詐欺罪で懲役6年の判決が確定した。2月20日、東京都内の自宅アパートが火事になり、焼け跡から遺体で見つかった。

 「平成経済事件の怪物たち」などバブル期に起きた事件の当事者らを取材した著作がある森さんは、中江氏とも旧知の仲だ。「7年ほど前、火災現場になったアパートに中江氏が移り住んだ頃に会い、酒を酌み交わしたのが印象に残っています。彼はある人材派遣会社の経営者と懇意で、転居する直前まで、『迎賓館』と呼ばれて話題になった同社の都内の屋敷に住み込み、『(迎賓館で飼育されている)犬の散歩をしている』と。そして『あの人(経営者)には足を向けて寝られない』と感謝していたことをよく覚えています」

 森さんといえば、「地下経済のフィクサー」と呼ばれた在日韓国人実業家、許永中氏を取材した作品など骨太のノンフィクションで知られ、大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞を受賞。最近では大手住宅メーカー「積水ハウス」が東京・西五反田の土地取引を巡って約55億円をだまし取られた事件の内幕を描いた本も話題になった。

 「バブル紳士」を追い込んでいった法務・検察も森さんの関心事だ。2012年の第2次安倍政権の誕生以来、検察が政治家の捜査に及び腰という現状を憂えてきた。昨年5月に出版した「官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪」の中で、稲田伸夫検事総長の後任を巡る黒川弘務・東京高検検事長と林真琴・名古屋高検検事長の“総長レース”も書いたが、黒川氏の定年を半年延長するシナリオだけは想定していなかったという。

 「黒川氏は国会対応をする法務省の官房長として3年8カ月、事務次官として2年4カ月の計6年余り、安倍政権を支え、永田町や霞が関では皮肉まじりに『官邸の守護神』と言われました。自ら泥をかぶり、政治との橋渡し役を担ってきたからです。とはいえ、定年延長は禁じ手ですよ」

 なぜここまでやるのか。森さんが注目しているのが、自民党の河井克行前法相の妻で、同党の河井案里参院議員が初当選した昨夏の参院選を巡る公職選挙法違反事件との関連性だ。広島地検は公設秘書らを逮捕し、現在も捜査が続く。「黒川人事」が政権の総意とみられるだけに「官邸VS検察」の構図が見て取れる、と森さんは読み解く。

 「昨年来、稲田検事総長は後任人事を巡り政権側からプレッシャーを受けていて…

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