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関電・原発マネー

/中 第三者委報告 利用された「人権研修」

森山氏と関西電力を巡る動き

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 「関西電力幹部に畏怖(いふ)心を抱かせ、影響力を維持、強化する効果をもたらした」。関電の問題を調査した第三者委員会が調査報告書で、そう指摘した会合がある。関電が幹部社員を対象に開いていた「人権研修」だ。その場で長年、講師を務めたのが元福井県高浜町助役の森山栄治氏(故人)だった。

 報告書によると、1988年に主に原発関連の要職に就く役職員を対象に開いた「懇親会」が最初。年1回、福井県内の関電施設などで開かれ、同県幹部も来賓などとして出席したという。「人権問題の今日的課題と原子力を担う企業の安全文化について」といったテーマが掲げられ、森山氏は県が71年から委嘱した「客員人権研究員」として「差別解消」を語った。

 だが、森山氏が参加者の一人を指名して研修内容について尋ね、指名された人が言葉を誤ると、森山氏は「何を勉強してきたのか」と怒鳴りあげたという。研修の終了後には、「先生、本日はありがとうございました」と全員で頭を下げた。報告書は、研修を通じて関電内で「先生」との地位を築いたとしており、問題を受けて辞任した八木誠・前会長も実際に報道陣の前で森山氏を「先生」と尊称した。

 ただ、森山氏は、差別撤廃運動に取り組む部落解放同盟の活動に携わった経歴はあるものの、その期間は短い。部落解放同盟によると、高浜支部で70年から2年書記長職を務めて以後、運営には一切関わっていないという。森山氏が関電からの便宜供与を引き出す手段とした幹部への金品提供を始めたのは、役場を退いた87年。研修で使い続けた肩書も県のものだった。

 研修の参加経験者には、森山氏の威圧的な態度は印象に残っていても、具体的な研修内容は「記憶にない」と話す人もいる。人権意識の向上という研修の本来の目的が、変質していたようにも映る。報告書は、森山氏が関電幹部に金品提供し、関電が工事発注などの要求に応じるという、いびつな構造が作られる過程で、この研修が果たした役割にも触れている。理不尽な森山氏の要求に応じた関電の対応について、人権問題に詳しい専門家は「被差別部落問題への偏見に基づく対応で、これも差別だ」と厳しく批判する。

 部落解放同盟は、問題発覚後に組坂繁之・中央本部執行委員長名で出した声明で、森山氏が町役場などで力を持つようになったのは解放同盟を離れた後だったことを指摘。「原発の建設運営をスムーズに持って行こうとする福井県、高浜町、関電による忖度(そんたく)が森山氏を肥大化させた」と関電や行政を非難した。

 「原子力事業を進める際、協力者を大事にしないと物事がスムーズに進まない。オピニオンリーダーの機嫌を損ね、地元の住民を巻き込んで反対に回られると困る」。関電中枢にいた元幹部が明かした本音からも、構図が築かれた一因が見て取れる。先の人権問題の専門家はこう推し量る。「とにかく原発を稼働させなければとの原発至上主義と人権問題への偏見を関電が持つがゆえに、自身で呼び込んだ不祥事だったのでは」

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