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「挑戦心は死ぬまで」義足でプロレス復帰へ 元五輪レスリング代表の谷津嘉章さん

プロレス復帰の意気込みを語る谷津嘉章さん。義足となった右足は細いが今はやる気がみなぎると語る=東京都渋谷区で2020年3月18日午後0時2分、梅村直承撮影

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 幻のモスクワ五輪代表が「義足のレスラー」としてリングに帰ってくる。1976年モントリオール五輪レスリング男子代表のプロレスラー、谷津嘉章さん(63)は昨年6月、糖尿病の合併症で右膝下を切断した。それでもリハビリを重ね、6月に「DDTプロレス」の大会で復帰する。「挑戦心は死ぬまで持ち続ける」と語る不屈の精神に陰りはない。

幻のモスクワ五輪代表からプロ転向

 東京都内で18日に記者会見した谷津さんは「ついにここまできたかと感無量だ。相手には障害者だからと手加減するなよと言いたい。私は汗をかきながら義足でレスラーをしていく。遠慮するな。おりゃ!」と力強く意気込みを語った。

 群馬県出身の谷津さんは栃木・足利工大付高(現足利大付高)でレスリングを始めた。日大時代には20歳で出場したモントリオール五輪の男子フリースタイル90キロ級で8位と健闘した。

1986年の全日本選手権男子フリースタイル130キロ級で優勝した谷津嘉章さん(中央)=東京都世田谷区で1986年6月29日

 階級を変えながら全日本選手権を5連覇し、「ピークの入り口だった」と語る80年モスクワ五輪。2大会連続で五輪代表になり、重量級のエースとしてメダルへの期待は高まった。しかし、東西冷戦下で日本がボイコットし、幻の五輪代表に。「悔しかった。応援してくれた人に申し訳なかった」と谷津さんは振り返る。その後は「プロの世界でチャンピオンになろう」と、プロレスへ活躍の場を求めた。

 80年に新日本プロレスに入り、ニューヨークでプロデビュー。国内初戦となった81年の試合ではアントニオ猪木とタッグを組み、アブドーラ・ザ・ブッチャー、スタン・ハンセン組と対戦し、流血戦の末に敗れた。72年ミュンヘン五輪に出場したジャンボ鶴田との「五輪コンビ」で名をはせるなど複数のプロレス団体を渡り歩き、印象的な活躍を見せた。

 2010年に30年間にわたるプロレス生活に一度は別れを告げたものの15年にリングに戻り、18年から第一線に復帰した。ところが19年2月ごろ、右足の人さし指に血まめができると徐々に症状が悪化した。足が化膿(かのう)し、痛みがふくらはぎまで広がり、壊疽(えそ)が判明して右膝下約10センチを残して切断した。さすがにショックの色は濃く、「人ができないことをやってきた自負がある。アスリート人生を支えてくれた足だった」と喪失感に襲われた。

栃木で聖火ランナー選出「一歩一歩踏みしめたい」

 手術後、モスクワ五輪代表が東京オリンピックの聖火ランナーに起用される可能性があると知り、「人生を開く」とリハビリに励んだ。公募の末、高校時代のレスリング人生の原点である栃木県足利市で聖火ランナーを務めることが決定。五輪の1年程度の延期が決まり、聖火ランナーについては流動的な面もあるが、「機会を与えてくれるなら走りたい。五輪に関わった人生。一歩一歩踏みしめたい」と意気込んでいる。

 昨年10月ごろからリングに戻る意欲が高まり、今年に入ってDDTプロレスで復帰するプランが具体化。世界初とされるプロレス用の義足をメーカーに依頼した。今月13日には義足を装着して初めてのスパーリングに臨み、ロープの反動を使って走り、投げ技や谷津さんの代名詞である足技「監獄固め」などを披露した。まだ動きにぎこちなさは残るものの、今後は筋力トレーニングに加え、本格的な実戦練習にも取り組む予定だ。

 全盛期に120キロはあった体重は90キロまで減ったが、気力は衰えていない。「義足で復帰なんてあり得ないが、リングに上げようとしてくれる人たちがいる。やるからには中途半端は許されない」。激しいスタイルから、かつては「荒武者」と呼ばれた名に恥じない戦いを目指している。【谷口拓未】

谷口拓未

毎日新聞東京本社運動部。1987年、北海道生まれ。2010年入社。津支局、中部報道センター(名古屋市)を経て、16年10月から現職。17年からパラリンピックを担当し、18年に平昌パラリンピックとジャカルタ・アジアパラ大会を現地取材した。19年はラグビーW杯取材に没頭。甲子園まで「あと1勝」に迫った高校球児の頃から好不調の波が激しい。

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