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南光の「偏愛」コレクション

「こんな面白いもん、なくなるわけないがな」上方落語の救世主・桂米朝さん没後5年 桂米団治さんと語る

桂米団治さん(手前)と桂南光さん=兵庫県尼崎市で2020年2月28日、梅田麻衣子撮影

 人間国宝であり、落語界唯一の文化勲章受章者であった桂米朝さんがこの世を去って、19日で5年。戦後の上方落語の危機を救い、いくつものネタを再構成して現代によみがえらせ、上方文化全般について研究し書き記す――。89年の生涯で米朝さんが残した大きな遺産は、今も一門の内外で受け継がれています。米朝さんに可愛がられた孫弟子・桂南光さんと、米朝さんを一番近くで見つめ続けた桂米団治さんが、没後5年の節目に語り合いました。【構成・山田夢留】

南光 米朝師匠が亡くなられて5年たちましたけど、今でも皆さんに「やっぱり米朝師匠すごかったでんな」とか「あの独演会の時のあのネタが良かったです」とか声をかけられます。「あのネタは米朝さんでんな」とか「このネタは米朝さんが作りはったようなもんでんな」とかって聞くのは、孫弟子としてはすごいうれしいですね。あなたは直弟子であり息子さんであり、この5年でいろいろ思うことがあったでしょう。

米団治 米朝は神主の家に生まれまして、神道では5年・10年というきっしょ(節目)でお祭りするので、今年が「五年祭」にあたるんです。「米朝まつり」をやろうということで、いろんな資料を整理してましたら、55歳までですべてこの世に残しはった人やな、と改めて気付きましたね。

南光 「わしは55で亡くなるかもしれん」とよう言うてはったけど、口だけやなしにその覚悟ができてはったということですか。

米団治 そうなんです。僕が入門したのは20歳の年で、米朝は52歳。その頃、「あと3年や」てなことを言うてはった。(米朝さんが師事した寄席文化研究家の)正岡容(いるる)さんなり師匠(四代目桂米団治)なり実父なりが、全員、数えか満の55で死んだもんやから、ちょいと強迫観念にさいなまれてたんですね。レコードも落語全集も、ほぼ55歳まででいったん完結してるんですよ。『上方落語ノート』(青蛙房)を文庫化(岩波現代文庫)したんですが、ああ、こんなことも50歳の時に書いてはったんやと、今、読むと思いますね。「上方の落語にこういうことは必要なことや」とか「これは今のうちに若いもんに言うとかなあかんな」とか、50代までには伝えたいことをほぼ本かレコードにした。だからこそ人間国宝はもとより、文化勲章ももらえる人やったんやな、ということをまざまざと今、見せつけられております。いろんな噺家(はなしか)の一門がありますけど、米朝の功績を否定する人はいないと思うし、「米朝落語全集」(創元社)は皆の教科書になってますもんね。

南光 自分のやれること、残すこと、すべて50代のうちにしようとしてはったんやね。噺家は60からや、とか言うけども、私が思うのに、60から皆、下がっていきますよ。体力から何からしたらね、やっぱり60までやと思う。

米団治 私、61になりましたけど。

南光 68ですわ、私は。

米団治 我々、もう遅いんですか?

南光 いやまあ、人によっていろいろですけどね。やっぱり元気な時に、米朝師匠は映像も残そうとされたでしょ。それが、ただ残すんじゃなくて、放送局に言うてホールで収録して番組を作らせたわけやから。自分勝手に何かしはるんやなしに、メディアも巻き込んでっていうのがすごいな、と思いますよ。やっぱり生き物やから、書いたものだけじゃなくて演じないと、というのはありますからね。

南光 米朝師匠って、1回しかやってはらへんネタもいくつかあるよね。

米団治 あります、あります。

南光 京都の金比羅の若手の勉強会(桂米朝落語研究会)とかでやってはるんです。「元犬」とか「初天神」とか。それが完璧やねん。実に細かいとこまで…

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