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余録

福岡・香椎海岸の男女の情死体…

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 福岡・香椎(かしい)海岸の男女の情死体の謎を追う松本清張(まつもと・せいちょう)の「点と線」は、アリバイ崩しの傑作ミステリーであるとともに戦後の社会派推理小説の誕生を宣言する作品だった。それが権力悪の犠牲となる官庁の課長補佐の死を描いていたからだ▲清張はその後も官庁の小官僚が巨悪の捨て駒にされる作品群で、このジャンルを確立する。実際に当時、汚職事件の捜査が実務をになう中間管理職の自殺でうやむやになる例が相次いでいたのである▲日本の官僚制が戦前からの権威主義的体質をひきつぎ、福沢諭吉(ふくざわ・ゆきち)の「強圧抑制(下位への抑圧)」という言葉でその構造的特徴が論じられていた時代だった。いや、実はそれが決して過去の話ではなかったのを示す遺書の公開である▲「最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ」。森友問題で財務省公文書改ざんが発覚した直後に自殺した近畿財務局の赤木俊夫(あかぎ・としお)さんの遺書や手記である。そこには改ざんに抵抗したのに作業を強いられた苦衷が記されていた▲改ざん指示の元は当時の理財局長・佐川宣寿(さがわ・のぶひさ)氏だったと明記し、省幹部の国会答弁は「嘘(うそ)に嘘を重ねる」ものと指弾している。遺族は赤木さんが改ざんの苦痛と過労でうつ病を発症し、自殺に追い込まれたとして国と佐川氏を提訴した▲法に根ざした合理主義は近代の官僚の矜(きょう)持(じ)の源泉である。それを守ろうとする現場を組み伏せてまで佐川氏ら高級官僚が守ろうとしたのは何だったのか。裁判での謎解きが待たれる「点と線・2020」である。

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