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映画「弥生、三月-君を愛した30年-」 すれ違い紡ぐ運命 きょう全国公開

(C)2020「弥生、三月」製作委員会

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 「家政婦のミタ」「同期のサクラ」など数多くのヒットドラマを生み出してきた人気脚本家・遊川和彦さんが監督、脚本を務めた映画「弥生、三月-君を愛した30年-」(毎日新聞社など製作委員会)が20日、全国公開される。運命に翻弄(ほんろう)され、すれ違いながらも愛を紡いでいく男女2人の30年間を、3月だけで映像化したラブストーリー。本作で高校生から教師役までを演じた主演の波瑠さんと、40年以上の教員経験を持つ教育評論家の尾木ママこと尾木直樹さん、遊川監督に、教育現場や年のとり方、人生の機微などをたっぷり語っていただいた。【まとめ・鈴木隆、写真・宮間俊樹】

遊川和彦監督=宮間俊樹撮影

 尾木 中学、高校、大学と44年間の教員経験がある私にとって、リアルで深い映画でした。教師の世界を認めてもらったような気もして励まされました。同時に生きる希望みたいなものを何度も感じました。遊川監督が観客に伝えたかった思いとは。

波瑠さん=宮間俊樹撮影

 遊川 主人公の女性は強くて主張を通す人。男性は損得とか変なプライドがあったりするけど、女性は感情的な部分がありつつも論理性がある。さらに、誰にも人を幸せにできる力があって、それに気づいてほしいという思いで作りました。

尾木直樹さん=宮間俊樹撮影

 尾木 学校の現場では、現実の社会にどう適応できるか、有意義な人材を養成するという構えがある。でも、僕は大嫌い。なぜ適応しないといけないのか。現状(の問題)を打破するために子供たちは学んでいる。僕の考えが映画の中で重なりました。

 遊川 (親友のサクラがいじめにあう)序盤のシーンで、弥生がクラスのみんなに訴えます。担任は正しいことを伝えないし、こんな大人に任せられない。自分が教師としてやっていこうという覚悟が見えます。

 波瑠 今の学校は、風に乗るのがうまい人を育てていて、それが正しいとされている気がします。私自身もそんな学校に行くのがイヤな時期がありました。中学の時に全員部活に所属しないといけない学校だったけど、美術部の先生は「オーディションでも行ってきなさい」と言ってくれました。その女性の先生は今も忘れません。私にとって大きな存在でした。

 尾木 この映画は、薬害エイズ、東日本大震災、いじめなど現実の問題が真に迫っていました。いじめの問題を35年研究していますが、弥生の言葉は本に書けるくらい的確でしたね。

 遊川 いじめは人が生きている限り存在する。その上で、しないようにと教えた方がいい。子供はうそやきれい事はすぐ見抜きます。人の弱さを認めることも大人になることの一つで、そのへんが突破口になればいいと考えていじめのシーンを書いたんですよ。

 尾木 いじめのシーンで弥生が怒るでしょう。波瑠さん、ものすごく真に迫っていました。

 波瑠 終盤、太郎の子供で教師のあゆむが生徒や保護者から非難されるシーンは、高校の時にサクラという親友をかばった弥生が根底にありましたね。悲しさや怒り、情けない気持ち。今ここにいる子供たちに学んでほしいと、必死に演じました。

 遊川 あの時の波瑠さんはアドリブも完璧で、弥生がのりうつっている気がして、愛とか悔しさとかいろんな感情が混在していました。弥生と波瑠さんがシンクロした瞬間。だから、波瑠さんという女優は信頼できるんです。私は一人の観客として、現場で見ていましたよ。

 尾木 映画全体もそうだけど、あのシーンは特に子供たちに映画館で見てほしい。ストレートに胸に飛び込んでくるセリフですよ。ああいう先生はなかなかいない。「もっと穏便に」とか言われて、モンスターペアレントに教師はつぶされてしまう。学校の先生には必見の作品です。波瑠さんは16歳から30年余りを演じていますが、年のとり方が自然に見えました。腰の角度とか手の動かし方とか気を使われたんでしょうね。

 波瑠 特殊メークを全く使っていないので、髪形とか白髪の具合とか常に相談して模索していました。ただ、何歳を演じているという感覚はほとんどなかったです。

(C)2020「弥生、三月」製作委員会

 遊川 波瑠さんは、美しく撮ってくれとか言わない女優。気持ちで演じていたので安心でした。終盤、50歳になってバスを追いかけるシーンも、50歳になっていると確信しました。

 尾木 サクラの「年をとるのがうらやましい」という言葉にハッとしたんです。私も教え子の学生を軽井沢のバスの事故で4人亡くしています。つらいですね。アンチエージングと世間では言われていますが。

 波瑠 人前に出る仕事はしていますが、エージングはすてきなことです。この作品でも共演した黒木瞳さんや奥貫薫さんのような大人の女性がいて、積み重ねの魅力というか、年をとるのってかっこいいですよね。自分自身、楽しみです。

 尾木 僕は62歳の時から尾木ママなんて言われていますけど、アンチエージングはちょっとイヤ。実は「アクティブに今を輝いて生きよう」が僕のテーマなんです。

 尾木 映画の縦軸は弥生と太郎の愛の物語なんですが、何度もすれ違っていきます。早く一緒になっていたらって思ってしまいますが。

 波瑠 生きている中で人は何かを乗り越えたり、手を差し伸べてもらったりすることはあっても、自分の人生に責任を持って初めて人としていられるんじゃないかと思うんです。この人がいると思っているうちは、結ばれなかったのかもしれません。

 尾木 うーむ、深い……。女優さんってすごいですね。

 遊川 波瑠さんはちゃんとしている女性。人としてきちんとしていないといけない、って無意識のうちにあるんです。女優としてもすごくプラス。そうした意味でも、この物語は大人の皆さんにも見てほしい。昔の自分を懐かしんで、振り返るだけでも、明日の元気につながるような気がします。

 波瑠 30年の物語ですが、描かれていない部分もたくさんあります。弥生は就職とか結婚とかいろいろな場面でサクラと話したい、聞いてほしいと思いながら生きてきた。自分の一部というか、自分に何かが欠けているような感覚を感じながら演じていました。だから、サクラの声を聞いたときは……。

 尾木 素晴らしいラストでしたね。感動して、胸が熱くなりました。


あらすじ

 1986年3月、同じ高校に通う結城弥生と山田太郎は互いにひかれ合っていたが、弥生の同級生で親友のサクラの病死によって思いを伝えることができず、別々の人生を歩み始める。2人はそれぞれ違う相手と結婚。太郎は男の子を持つが、子供のころからの夢に破れて離婚する。弥生は東日本大震災で大切なパートナーを亡くす。生きる希望を見失いかけた2人に、30年前のサクラからメッセージが届く。


監督、脚本:遊川和彦

音楽:平井真美子

撮影:佐光朗

美術:禪洲幸久

照明:加瀬弘行

録音:林大輔

出演:波瑠、成田凌、杉咲花、岡田健史、小澤征悦、岡本玲、夙川アトム、矢島健一、奥貫薫、橋爪淳、黒木瞳

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