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社説

性犯罪の処罰 被害実態踏まえた法制に

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 被害者が泣き寝入りすることがあってはならない。性暴力の実態を踏まえた法律整備の契機にしたい。

 昨年3月に無罪判決が続いた2件の性暴力事件について、福岡高裁と名古屋高裁が逆転有罪の判決を出した。いずれも、被害者が抵抗できない状態だったかどうかが争われた。

 刑法は加害者が暴行・脅迫をするか、抵抗できない状態につけ込むことを性暴力処罰の要件としている。

 名古屋の事件は、実の娘と性行為をした父親が起訴された。1審は、娘が父親の意向に全く逆らえなかったわけではないと判断した。高裁は娘が長年の性的虐待や暴力で、抵抗する気力を失っていたと認めた。

 福岡の事件は被害者の女性が深酔いしていた。1審は、抵抗できない状態との認識が被告の男になかったと判断したが、高裁は覆した。

 どちらの1審判決も、社会の感覚からは懸け離れていた。両高裁の判断は妥当だろう。

 刑法の規定は、「被害者は抵抗する」との考え方を前提にしている。

 しかし、恐怖や衝撃、相手との関係性から、被害者が抵抗できないケースは少なくない。捜査担当者や裁判官の見方によって判断が割れ、加害者を処罰できないこともある。

 このため被害者団体などは、「暴行・脅迫」などの要件を撤廃し、被害者の意思に反した「不同意性交」を犯罪とするよう求めている。

 これには同意がないことの立証は難しい、冤罪(えんざい)が起きかねないなどの反対意見がある。3年前の刑法改正時にも議論になったが見送られた。

 スウェーデンは一昨年、積極的な同意がなければ犯罪とする法改正をした。被害申告の内容や相手との関係性、当時の状況などから、同意がなかったことを立証するという。

 日本でもこうした海外の例を参考にしながら、不同意性交罪を本格的に検討すべきだろう。今年は刑法の見直しをする節目となる。被害者も加えて議論を進める必要がある。

 性暴力の被害を相談しやすいような環境づくりも求められる。捜査や裁判に携わる人が、性犯罪への理解を深める研修も欠かせない。

 昨年の無罪判決をきっかけに、性暴力に抗議する「フラワーデモ」が全国に広がった。重く受け止めて、法整備の動きを加速させるべきだ。

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