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危険ドラッグ事故で一人娘を亡くした父 「グリーフケア」で新たな一歩

実久さんが背負っていたランドセルは事故の衝撃で肩ひもがちぎれていた。「行ってきます」。元気に登校していった姿が母の脳裏に焼き付いている=香川県善通寺市で2015年3月17日、小松雄介撮影

 亡き娘と歩んでいく――。香川県善通寺市で2014年、小学5年生の秋山実久(みく)さん(当時11歳)が暴走車にはねられ亡くなった。事故原因は運転手が直前に吸った一つまみの危険ドラッグ。理不尽に未来を奪われた一人娘の死とどう向き合うか――。自問してきた父親は、同じような経験をした人の悲しみに寄り添いたいと、新たな一歩を踏み出した。

 「本当に悲しい出来事でした。今も忘れることはできません」。3月15日、大切な人を亡くした悲しみを癒やす「グリーフケアアドバイザー」の1級認定講座が東京都目黒区で開かれた。実久さんの父隆志さん(50)は約30人を前に、自身の経験を語った。

 実久さんは14年1月29日、下校中に軽乗用車にはねられた。運転していた男=危険運転致死罪で懲役12年が確定=は、危険ドラッグを吸引していた。隆志さんが現場に駆けつけたとき、実久さんに意識はなく、救急隊員による心臓マッサージを受けていた。赤いランドセルの肩ひもは、事故の衝撃でちぎれていた。

 「実久、実久」。搬送先の病院で両親が呼びかけると、実久さんはまばたきを2回して涙を流した。反応があったのは、それが最後だった。9日後、息を引き取った。

 事故から半年後、記者が自宅を訪ねると、実久さんが家族に宛てた多くの手紙が飾られていた。小学校入学前に書いた一枚には、看護師だった母裕紀子さん(48)へのメッセージが記されていた。

 <お母さんへ やきんだったので夜ゆっくりやすんでね。それでおひるにうどんたべにいこうね>

 夜勤後に疲れて帰宅した母親を気遣い、枕元に手紙を置いて登校するのが、実久さんの日課だった。

 実久さんには、管理栄養士になるという夢があった。「お母さんが看護して、私が栄養指導できたらいいな」。そんな親子の夢は、断ち切られた。

 当時、全国で危険ドラッグによる事件や事故が相次いだ。厚生労働省研究班の調査では、13年時点の危険ドラッグ使用経験者は推定40万人。乱用者は自身の体をむしばむばかりか、車の暴走という形で他人にも危害を加えた。実久さんも暴走車による被害者の一人で、秋山さん夫妻は同様の被害が後を絶たないことにむなしさを募らせた。

 夫妻は、長野県で14年5月に危険ドラッグによる暴走事故に巻き込まれて亡くなった消防士の川上育也さん(当時25歳)の父親と一緒に、危険ドラッグの根絶を国に要望した。2家族の訴えは、規制を強化する改正医薬品医療機器法の成立(14年11月)へとつながった。

 法改正後、隆志さんは公益社団法人「かがわ被害者支援センター」(高松市)の依頼で、香川県内の高校生や保護者に向けて事故について講演するようになった。また事件・事故被害者の等身大のパネルを作り、遺族の思いを伝えているNPO「いのちのミュージアム」(東京都日野市)の活動にも参加してきた。

 しかし、苦悩の日々は続いた。自宅に帰ると花がた…

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