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2019年10月の台風19号で、東日本大震災後に整備した堤防と山の間にある住宅が浸水した山田町田の浜地区について、町の水害検証委員会は24日、検証結果を報告した。「排水施設の設計は妥当で、水害リスクの予測は困難だった」とし、今後に向けて、津波と土砂災害の両方に対する防災強化を提言した。【日向米華】
同地区では堤防周辺で住宅81戸が浸水した。検証委は岩手大の小笠原敏記教授(水工学)を委員長に、5人で構成。浸水被害の要因や水害被害を事前に予測できたかなど4項目について検証し、報告書をまとめた。
報告書では、過去に大規模な土砂災害が発生しておらず、山の急斜面は崩壊対策をしていたこともあり、「水害リスクの事前予測は困難だった」と判断。堤防を含む同地区の排水施設は過去の災害も考慮した上で基準通りに設計されており、検証委は「ハード面での施設の不備もなかった」と分析した。
報告書では浸水要因として、短時間での未曽有の豪雨発生▽流木を含む大規模な土石流の発生▽排水施設の閉塞(へいそく)▽本来の流域以外からの越流――の4点を挙げた。土石流は、台風19号の前に発生した18号の影響で土壌の水分量が高まっていたことも要因と指摘。閉塞は、降雨量が一時的に減少して堆積(たいせき)物を押し流す力が弱まったことも一因と推測した。
今後の復旧については、土砂崩れの発生を防ぐ砂防ダムの建設や、堤防に開口部を設けるなど津波と排水機能両方への防災強化を提言した。小笠原委員長は「三陸沿岸では近年台風も増えているが、大雨に備えた対策はまだ弱いのが現状。今回の検証結果が参考になれば」と話した。今後は住民への説明会などを通じ、復旧方針を決める予定。