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葬送行進曲で読み解く「#びわ湖リング」 原典回帰・演出の功績とは?

「神々の黄昏」第3幕、ブリュンヒルデの自己犠牲の場面で炎に包まれるギービヒの館とハーゲン=大津市で2020年3月7日午後6時半(びわ湖ホール提供)

 「ジークフリートの葬送行進曲」はお好きですか?

 「ニーベルングの指環(ゆびわ)名曲集」のタイトルでレコードやCDを制作するなら、十中八九収録される曲。ワーグナーの作品中でも屈指の有名曲ではあるが、ちょっと大げさで、心に突き刺さる美しい旋律が聴けるわけでもない。筆者は最初に聴いた中学生の頃に悪い第一印象を刷り込んでしまい、この曲を単体で聴くことがおっくうになった。そして3月7、8日にびわ湖ホール(大津市)で無観客上演され、インターネットで無料ライブ配信された「神々の黄昏(たそがれ)」が、積年の苦手意識を覆してくれた。苦手返上の理由はいったい何だったのか。それを考察することで、ネット上で大きな反響を呼んだ「びわ湖リング」の成功の鍵らしきものが見えてきた。【濱弘明】

 びわ湖ホールが独自のプロダクションとして2017年に始めたリング4作品の通し上演は、神々の黄昏によって物語の「環」を閉じることで、国内地方劇場による空前の偉業となるはずだった。ところが新型コロナウイルスによるイベント自粛の波をもろに受け、上演8日前に中止を決定。スタッフの機転によりネット配信する運びとなり、「びわ湖リング」「BiwakoRing」の愛称が地域を超え、海を越えて多くの人に共有されるようになった。

 4部作の演出を担当したのはドイツ人のミヒャエル・ハンペ。カラヤンをはじめ多くの名指揮者と共同作業を経験してきたハンペは既に84歳だが、リングの演出は初体験だった。「黄昏」の企画が本格始動した昨年9月、筆者はハンペにインタビューする機会を得て、彼の演出哲学にじっくりと耳を傾けた。

 「オペラの学校」(OPERNSCHULE)などの著書があり、ドイツの大学でも後進の指導にあたるハンペはオペラにおいて、音楽と歌と演技の結びつきに重きを置く。「演出家は舞台上で何でもできる」と宣言しつつ、演出家の自由にさまざまな制約を課…

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濱弘明

1965年、兵庫県生まれ、東京大学法学部卒。89年入社で政治部、特別報道部、地方部、運動部、編集制作センター(整理)などで取材記者やデスクを歴任し、2017~19年大津支局長。19年7月から大阪学芸部長。「選抜高等学校野球大会80年史」の編集責任者を務めた。音楽の演奏史などの分野に明るい。

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