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余録

救急車が都合できない……ベッドもあいてないんです…

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 「救急車が都合できない……ベッドもあいてないんです。それに、医者も看護婦も見つからない。みんな忙しくて。劇場は全部、店とレストランはほとんどみな、しまっているし、通りは一日中葬式だらけだ」▲まるで今日の欧州や米国のようだが、これ実は第一次大戦末期のスペイン風邪を背景にしたキャサリン・アン・ポーターの小説「幻の馬 幻の騎手」の一節である。自身の臨死体験をもとにした作品は当時の医療崩壊の産物といえる▲石弘之(いし・ひろゆき)さんの「名作の中の地球環境史」はこのポーターの「インフルエンザ文学」とともに、スペイン風邪流行当時の与謝野晶子(よさのあきこ)による日本政府批判も紹介している。晶子はこのころ11人の子の母で、家族の多くが感染したのだった▲「大呉服店、学校、興行物、大工場、大展覧会等、多くの人間の密集する場所の一時休業を(なぜ)命じなかったのでせうか」。母の目には政府の対応が手ぬるく見えたようで、彼女ならロックダウン(都市封鎖)も驚かなかったろう▲新型コロナウイルスの感染者急増で東京都が今週末の外出自粛を呼びかけたのに応え、隣接自治体も都への移動自粛を住民に求めるという。このままでは感染爆発による医療崩壊やロックダウンに追い込まれる「重大局面」という▲欧州などの医療崩壊、ロックダウンを目(ま)のあたりにしたこの数日だから、事態を楽観はできない。感染爆発回避の可能性は残されているのか。その答えを個々人それぞれの行動が分かち合う今週末である。

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