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勧酒詩選

新型コロナと花見 あえて、広大無辺を思う 続続・憂鬱すぎる春に

満開のしだれ桜=東京都文京区の小石川後楽園で2020年3月21日、伊藤和史撮影

 東京オリンピック・パラリンピックが1年程度延期になった。あの、男女のマラソンの代表を争ったマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)ファイナルチャレンジの興奮が、はるか遠い過去に思えてくる。世の中のムードはどう変わるのだろうか?

 「延期ではなく中止にすべきだ。たった2週間のイベントのために、新型コロナウイルス対策がおろそかになっていいのか?」という趣旨の意見もウェブ上で見た。もっともな見解と思う。ではあるが、あまりに正しかったり、「たった」なんて言われ方をしたりすると、かえって大迫傑と一山麻緒の激走がよみがえってくる。

 などと思っていたら、追い打ちが来た。小池百合子東京都知事が25日夜、「外出自粛」の要請を発したのだ。世の雰囲気は、ますます緊迫したものになってきた。

 実は先週末、世の中があまりに収縮してきたので、少々、枠を外れたい気になって、あまり推奨されない桜見物に行ってみた。東京の桜の名所に数えられる小石川後楽園(文京区)。一部の木(しだれ桜)は早くも満開だった。

   天の邪鬼(あまのじゃく)わが友にせん花の酒

 長谷川櫂氏の句集「吉野」に、こんな句がある。句にあやかって、こちらも世の大勢を横目に、あまのじゃく的に行きたいところだと思ったわけだが、今やそういう状況ですらなくなってきたのか。

 小石川後楽園に行った後、23区西部の自宅近くの桜も見て回ってみた。東京では先週末の3連休が満開かと予想したが、まだ早かった。まさに今週、この週末にかけてが見ごろだろう。例年だと、レジャーシート持参で盛り上がるグループを何組も見かける公園もすぐ近いのだが……。

 今年はそれもままならなくなったと考えていたら、「吉野」に次の句があったのだ。

   そののちの我らはしらず桜かな

 今の日本で、何かぐっと来る一句ではないだろうか。

 「そののち」「我らはしらず(知らず)」とは、何の後なのか、作者を含めた「我らは」何を知らないのか。謎だらけの句ではあるが、「あとがき」を読むと少しわかる。

 桜の名所の中の名所、奈良・吉野山でもいちばん眺めのよい「櫻花壇」という旅館があり、作者らは毎年、そこで花見句会を開いてきたのだが、その旅館が惜しくも廃業したのだという。

 つまり、「そののち」とは廃業後を言い、…

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伊藤和史

1983年入社。岐阜支局、中部報道部、東京地方部、東京学芸部、オピニオングループなどを経て、2019年5月から東京学芸部。旧石器発掘捏造(ねつぞう)事件(2000年)以降、歴史や文化財を中心に取材

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