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課題の多い船出と言えるだろう。NTTドコモなど携帯電話大手3社が先週、次世代通信規格「5G」のサービスを始めた。
データ通信速度が従来の第4世代「4G」の最大100倍で、2時間の映画をわずか3秒でダウンロードできる性能があるという。
携帯各社は利用料金を実質的に4G並みに抑えた。その上で、VR(仮想現実)を使った音楽・スポーツ動画などの娯楽コンテンツも用意して乗り換えを促している。
普及に向けた最大の課題は、利用できるエリアが狭いことだ。当面は東京、大阪など大都市でも一部地域に限られる。
5Gは電波を飛ばせる距離が短く、建物や人体などに通信が遮られるためだ。全国で日常的に使えるようにするには4Gの約100倍の基地局の整備が必要で、それまでに数年かかるという。
専用端末の品ぞろえが限られ、価格が高いのも難点だ。発売されているシャープ製などの端末は10万円以上する。日本市場のシェアの半数近くを占める米アップル製iPhone(アイフォーン)の対応端末は、発売時期が未定だ。
携帯各社が5Gサービス開始を急いだのは、今夏の東京オリンピックに間に合わせるためだった。だが、五輪が延期され、出はなをくじかれた感は否めない。
それでもほぼリアルタイムで大容量の通信が可能な5Gに対する期待は大きい。人工知能(AI)や最先端のロボット技術などを組み合わせれば、自動運転車や高度な遠隔医療の実現につながるからだ。
ドコモの親会社のNTTは5Gを活用した未来の街づくり「スマートシティー」事業に乗り出している。自動運転技術を持つトヨタ自動車と業務・資本提携し、静岡県内の自動車工場跡地に渋滞や事故のない安全で便利な未来の街をつくる計画だ。
収集した住民データは慎重な取り扱いが求められる。NTTやトヨタは自治体などに管理してもらう方針だ。個人情報を独占する米大手IT(情報技術)企業とは異なる日本流の事業モデルを目指している。
日本は5G活用で米中韓などに出遅れた。挽回するには、社会に役立つサービスの実現がカギとなる。