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東京へ ともに歩む

毎日新聞

国際オリンピック委員会(IOC)総会の投票で2020年の五輪開催が東京に決まり喜ぶ安倍晋三首相(前列右から3人目)、猪瀬直樹東京都知事(当時、同4人目)ら関係者=ブエノスアイレスで2013年9月7日午後5時26分(代表撮影)

Field of View

スポーツ界が意義を考える1年に 東京オリンピック開幕 来年7月23日決定

 東京オリンピック・パラリンピック開催への道のりは長い。2013年の国際オリンピック委員会(IOC)総会で20年開催は決まったが、招致活動は15年前の05年に始まった。日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長(当時)がこの年の年頭に五輪開催を目指す意向を示し、16年五輪招致が本格化。東京都が福岡市との国内招致合戦に勝って立候補したが、09年のIOC総会で落選した。

 竹田会長は招致の理由として「オリンピックムーブメント(五輪を中心にした諸活動)の推進と国際競技力の向上」を強調し、「我々が1964年の東京五輪で得た自信と誇りを、21世紀の子供たちにももたらしたい」と熱をこめた。

2016年東京オリンピック招致大使に任命された(左から)山下泰裕さん、有森裕子さん、星野仙一さんと招致委員会の石原慎太郎会長(東京都知事)、竹田恒和副会長(JOC会長)、河野一郎事務総長(肩書はいずれも当時)=東京都新宿区の東京都庁で2007年5月24日午後2時21分、木葉健二撮影

 だが、それは「五輪をやりたい」という願望以上には聞こえなかった。多額の税金を投入し、市民生活にも影響を及ぼしながら五輪を開催することで、スポーツ界は市民にどんな役割や貢献を果たせるのか。その理念や自覚は示されなかった。JOCだけでなく各競技の関係者にも、その視点で語れる人はいなかった。

 東京が落選した直後から日本では20年五輪招致の動きが始まり、再び立候補した東京が13年IOC総会の投票でマドリードなどを破って開催権を獲得した。スポーツ界では国の予算の大幅増額に後押しされて選手強化に熱が入れられ、ビジネス化やエンターテインメント化も進んでにぎやかになった。その一方で、五輪後も見据えた「スポーツ界の理念」の議論は活発ではなく、市民に向けて具体的に示されることもなかったように思う。

 新型コロナウイルスの感染拡大で健康や安全が揺らぎ、五輪だけでなく世界中で多くの競技スポーツも、市民の身近な運動も、「やりたい」という意欲だけではできない状況に陥った。今後、感染の長期化や経済の停滞によって、スポーツは私たちからさらに遠い存在になる懸念もある。

 延期に伴う追加経費は数千億円に上ると見られ、東京都や国の負担は増えるだろう。それでも来年に五輪を開こうとするのであれば、スポーツ界はなぜ五輪の開催が必要か、五輪を通じて何ができるのか。改めて明確に示す必要がある。延期によって与えられた1年を、スポーツに関わる人々が個々に、そして一体となって、自分たちの意義や役割を考える時間にしたい。【石井朗生】

石井朗生

毎日新聞社客員編集委員。1967年生まれ、東京都出身。92年に毎日新聞社入社。2020年3月に退職するまで28年間の大半を運動部(東京、名古屋、大阪)で過ごし、陸上、アマ野球をはじめ多くの競技を担当。五輪も夏冬計6大会を取材した。大学時代に陸上の十種競技に挑み、今も大会の審判や普及イベントの企画・運営、中高生の指導に携わっている。