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社説

滋賀患者死亡で再審無罪 自白依存の脱却が必要だ

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 あらかじめ立てられた捜査の筋書き通りに自白が誘導され、被告に有利な証拠は開示されなかった。捜査機関は冤罪(えんざい)を生んだ経緯を検証し、信頼回復に取り組まなければならない。

 2003年に滋賀県の病院で入院患者の人工呼吸器を外して殺害したとして、殺人罪で服役した元看護助手、西山美香さん(40)の再審(やり直しの裁判)が大津地裁であり、無罪が言い渡された。

 大西直樹裁判長は判決理由で、不整脈などによる自然死だった可能性に言及し、「患者が殺害されたという事件性すら証明されていない」と弁護側の主張を認めた。

 逮捕から約15年9カ月ぶりに「名誉回復」が現実のものとなった。だが、懲役12年、最初の再審請求から9年半。自由を奪われ、失われた年月はあまりにも長い。

 まず浮き彫りになったのは、自白に依存する捜査体質である。

 判決は、取り調べの警察官が、軽度の知的障害がある西山さんから恋愛感情を寄せられていたのを熟知しながら、捜査機関のストーリーに整合する自白を引き出そうと誘導したと断じた。

 過去の冤罪事件でも密室での取り調べがうその自白を作った。取り調べの可視化は進んでいるが、再発を防止するには、弁護士の立ち会いを検討することが必要ではないか。

 警察、検察による恣意(しい)的な証拠の取り扱いも明るみに出た。

 検察が189点もの証拠を裁判所に出したのは再審決定後である。うち、58点は警察から検察に渡っていなかった。

 「たん詰まりで死亡の可能性」を指摘した医師の報告書が検察に提出されたのは昨年だった。西山さんが人工呼吸器を外していないと主張した自供書も長らく非開示のままだった。

 刑事訴訟法は警察が捜査記録を速やかに検察に提出するように定める。捜査の常道から逸脱した行為であり、看過できない。

 虚偽の自白に基づく警察や検察のずさんな捜査をチェックできなかった裁判所の責任も重い。

 捜査機関は自白に頼る手法から脱却し、客観的な証拠に基づいて捜査しなければならない。二度と冤罪被害者を生まない取り組みを進める責務がある。

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