タイのポストモダン文学を代表する作家、プラープダー・ユンさんの『新しい目の旅立ち』(福冨渉訳、ゲンロン)は、旅と思索の軌跡を記録した哲学的な紀行文だ。大都会バンコクの喧噪(けんそう)を逃れ、フィリピン中南部に位置するシキホール島に滞在。自然や神、人間の存在について突き詰めている。
「旅の最初の目的は、自然についての作品を作っているアーティストを研究することでした。ですが、実際の旅は想像とは違っていて、研究の目的や滞在の方向性がかなり変わってしまった。自分自身の思考を理解するための書物になりました」
作家は、“黒魔術の島”として知られるシキホール島を訪れ、島の人々、魔女や祈とう師と出会う。同時に思想家のスピノザ、ソロー、カジンスキー、ラブロックらの哲学に思いを巡らせる。自然と人間はどうあるべきか。旅のリアリズムと思索が自在に行き来する叙述のスタイルで、自身の思考の枠組み、ものの見方の外側に踏み出そうとしていく。
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