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余録

「やすらえ、花や」…

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 「やすらえ、花や」。花、つまり桜に、ゆっくり咲いていろと呼びかけるはやし言葉である。昔は、散る桜が疫(やく)病(びょう)神(がみ)を四方に散らせると考えられ、花を鎮(しず)める「鎮花祭(ちんかさい)」の神事が各地の神社に伝わっている▲起源をたどれば、崇神(すじん)天皇5年の「国内に疫病多く、民の死亡するもの半ば以上」という日本書紀最初の疫病の記録へとゆきつく。古代の律令制では神祇官(じんぎかん)が行う国家的祭儀だったから、花にかける疫病よけの願いの切実さが分かる▲昔の人が散る桜に不吉な連想をしたのは、実際にも暖かくなる今ごろになると疫病がはやったからだろうか。時はめぐって花見の宴も自粛された今年、花びらの舞い散るままに新型コロナウイルスの感染が各地で急拡大する春である▲とうとう感染者は世界で80万人を超え、死者も4万人を上回った。これまで中国・武漢、イタリア・ミラノ、米国・ワシントンなど、感染爆発を伝えるニュースの背景に映ってきた各地の桜だった。いうまでもなく桜の花に罪はない▲ただ東京もここに来て感染者が急増、都知事が「感染爆発の重大局面」を宣言する事態である。週末の外出、夜の酒場の利用など、相次いで自粛要請が繰り出されれば、散る花びらに新型コロナの拡散がだぶって見えるのも仕方ない▲<やすらゐや鬼も籠(こ)もれる若草野/几董(きとう)>。「やすらゐ」は京都・今宮神社の花鎮め神事だが、今年は恒例の行列練り歩きも中止という。人の密集も、はやし声も疫鬼の思うつぼで、ここは人が籠もるしかない。

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