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緊急事態宣言、発令後も自粛頼み 施設使用停止などに法的根拠 放送局ににらみも

緊急事態宣言までの流れと主な権限

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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が発令されるかどうかが取り沙汰されている。自治体による外出自粛や大型イベント自粛といった要請が、発令によって「法的根拠のある」要請や指示となる。ただ、従わないことへの罰則はなく、「自粛頼み」が続くことは変わらない。発令によって初めて政府や自治体に付与される権限には制約があるのが実情だ。

「自宅待機」強制できず 私権制限には道筋

 宣言が出ると、都道府県知事は法的根拠を持って住民への外出自粛を要請できるようになるが、「自宅待機」の強制まではできない。大半の措置は住民や企業、医療機関に自主的に協力してもらうのが前提だ。

 それでも知事たちが発令を求めるのは、自粛要請に法的根拠が欲しいためだ。弁護士でもある吉村洋文大阪府知事は「違和感を持ちながらやっているのが実情。宣言を出すべきだ」と判断を迫る。吉村知事は大阪を対象区域とする目安として、感染者が40~50人確認される状態が数日続き、感染経路が不明なケースが増え、検査数に占める陽性者の割合を示す「陽性率」が高い状態を挙げ、「3週間くらい外出自粛を要請するのがメインになる」と話す。

 発令後、知事は期間と区域を決めた上で、食料品の買い出しなど生活の維持に必要な場合を除き自宅にとどまるよう要請できる。学校や保育所、百貨店などの使用停止も要請できる。従わない場合は法律上の履行義務が生じる「指示」も出せる。

 病院や医薬品メーカー・販売業者は、患者の治療や薬の生産、販売などを適切に行うことが義務付けられる。知事には民間企業に薬やマスク、食料品の売り渡しを求める権限も与えられ、正当な理由がないのに応じない場合は強制的な収用も可能。「住民生活に必要なものだ」(東京都の担当者)というのが私権制限の理由だ。患者用ベッドが不足した場合、臨時の医療施設をつくるための民間の土地建物の使用も認められ、一定の条件を満たせば所有者の同意を得ずに使用することもできる。

 ただ、罰則が科されるのは知事の命令に従わずに医薬品を隠したり、臨時医療施設の設置予定地への立ち入り検査を拒んだりした場合などだけだ。既に自粛要請は行われており、自民党幹部は「やっていることに法的根拠を持たせる意味合いが強い」と話す。安倍晋三首相は1日の参院決算委員会で、外出を禁じ違反者に罰金も科すフランスのロックダウン(都市封鎖)を引き合いに「フランスでやっているようなことができるかと言えば、それはできない」と断言した。

 発令の影響は放送局にも及ぶ。特措法2条でNHKは首相が指示できる指定公共機関として明示され、民放も政令で指定できる。現時点では民放は対象外だが、民放関係者は「状況次第で指定されるかもしれない」と懸念。「政府が、民放も指定できるとの姿勢を見せるだけで、コロナ対応への批判報道に萎縮効果がある」と指摘する。

 総務省などによると、首相がNHKに指示できる内容は、報道機関としての業務を継続するために感染拡大の防止措置を講じることや、閉鎖空間でのイベントを自粛することなど。報道内容については、番組編集の自由を定めた放送法3条との関係があり、同省は「緊急事態宣言が出された場合でも、番組内容の差し替えなどを指示できない」と説明する。【小林祥晃、津久井達、内田幸一】

首相「宣言出ればさまざまな要請も」

 それでも政府は、発令後に法的根拠のある要請・指示を出すことで、住民の行動に一定の影響を与えられると見込んでいる。

 東京都の小池百合子知事が3月25日に「このままの推移が続けばロックダウンを招く」などと述べると、ネットで「4月1日に宣言が出る」とのうわさが広がり食料買いだめも起きた。国民の関心は高い。政府関係者は「これまでも自宅にとどまる人は多かった。発令で外出を控える人はもっと増えるはず」とみる。

 外出自粛を巡っては、一歩踏み込んだ方策の検討も進む。その一つが、警察官が不要不急の外出をしている可能性のある人に個別に声をかけ、帰宅を強く促すというものだ。内閣官房の担当者は「いわゆる職務質問と同じような形で、外出の理由を尋ねるということは可能だ」と話す。

 学校や映画館、百貨店などの使用停止、イベントの中止に関しても、各知事からの要請・指示を受けた事業者や施設名を速やかに公表する。小池知事が「夜の街」で感染が広がっているとして来店自粛を呼びかけているキャバレーやナイトクラブなど接待を伴う飲食店も含まれる。大阪府は4月2日の対策本部会議で発令された場合の対応策を決定。制限する施設を例示したが、府内に1万カ所以上あるといい、急ピッチでリスト作成を進めている。

 強制力はないが、公表による社会的プレッシャーは大きい。西村康稔経済再生担当相は1日の参院決算委員会で「『こういったイベントには行かないように』『こういった施設は使えません』と公表し、実効性を確保していく」と述べた。

 発令後、知事はJRや私鉄などの鉄道会社に、運行時間の短縮や中止の指示を出すことも可能。内閣官房は「長期間、広範囲に交通が止まることはない」と説明。「基本的には知事が必要性を判断し、知事の責任で行うことになる」(官邸幹部)という立場だが、必要な措置が講じられていないと判断すれば政府が直接指示を出すこともできる。

 首相周辺は「宣言が出れば、法律上できることを適切にやっていくだけだ」と話す。首相も国会答弁で「さまざまな要請はさせていただくことになるかもしれない」と含みを持たせた。【青木純、竹地広憲】

感染症法政令も改正 専門家「より大きな網を」

 感染拡大を受け、政府は3月26日に感染症法に関する改正政令を閣議決定した。感染者が発生した場所周辺の「72時間以内の交通の制限または遮断」の権限を都道府県知事に与える条文などの対象に、新型コロナウイルスによる感染症も加えた。建物への立ち入り制限や、周辺道路の遮断も可能になる。

 ただし、広い範囲を対象に鉄道の運行などを止めることを想定したものではないという。厚生労働省の担当者は「限られた建物や道路での対応を規定しており、地域全体を封鎖するようなことは想定されていない」と説明。感染者が発生していない施設で、予防的に立ち入りを制限することも難しいという。

 感染症法は、危険度に応じて感染症を1~5類に分類している。エボラ出血熱やペストは1類、中東呼吸器症候群(MERS)や重症急性呼吸器症候群(SARS)などは2類になる。分類される前でも「指定感染症」になれば1~3類に準じた緊急的対応を取ることができるが、局所的な対応しか規定していない。発令後も感染症法に基づく対策は同時に進められる。

 政府は2月1日、新型コロナウイルス感染症を指定感染症に指定。都道府県知事は、患者に入院を勧告したり、ウイルスをまん延させる恐れのある業務で患者の就業を制限したりすることができる。新型コロナウイルスの場合は、人と接する可能性のある全職種が対象になる。また、知事は症状が出ている人だけでなく、症状がなくても感染が疑われる人に対し、医師の診断を受けるよう勧告することもできる。

 感染症法でも知事は外出自粛を求めることができるが、対象者を感染者に加えて、濃厚接触者ら感染が疑われる人に限定。感染していない人にも要請できる特措法とは異なる。

 鈴木宏・新潟大名誉教授(国際感染症学)は「人がウイルスを運んでいることを考えれば、街や地域全体など、より大きな網をかけないと対処できない」と感染症法の限界を指摘。無症状や軽症の人が多く、感染経路が特定しづらいことを踏まえ「人の行動をコントロールするという視点が不可欠。特措法も含めて、強制力を持った厳しい措置も視野に入れるべきだ」と話す。【渡辺諒、岩崎歩】

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