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東京へ ともに歩む

毎日新聞

大会組織委員会の武藤敏郎事務総長(右)やエンブレム委員会の宮田亮平委員長(左)と笑顔を見せる野老朝雄さん=東京都港区で2016年4月25日午後5時12分、喜屋武真之介撮影

Field of View

類似騒動で選考やり直し エンブレムにも「透明性」 東京開催決定から7年③

 インターネットを発端にした旧エンブレムの騒動をどう見ていたか――。私の質問に、新エンブレム選定のトップだった宮田亮平・文化庁長官の口調は慎重だった。「僕は過去のことは言わない。白紙に戻った段階から考えている」。大会組織委員会も、もう失敗できない状況だった。

白紙撤回を受け、はがされる東京オリンピックの旧エンブレム=羽田空港で2015年9月2日午後5時6分、後藤由耶撮影

 アートディレクターの佐野研二郎さんが制作した旧エンブレムが発表されたのは2015年7月24日。当初から選考の密室性が批判の的となり、ベルギーのリエージュ劇場のロゴと類似しているとインターネット上などで指摘されると、わずか1カ月余りで白紙撤回に追い込まれた。当時は新国立競技場の旧計画が総工費の高騰で白紙撤回になった直後。東京オリンピック・パラリンピック自体への不信感が大きく広がっていた。

東京オリンピック・パラリンピックのエンブレム最終候補4作品を発表し、記者会見する武藤敏郎・大会組織委事務総長(左から2人目)と宮田亮平エンブレム委員会委員長(同3人目)ら。作品は左からA、B、C、D=東京都港区で2016年4月8日午後6時29分、徳野仁子撮影

 新エンブレム選考で組織委が腐心したのは「透明性」だった。候補作を広く公募し、最終候補4作品は1点約2000万円掛かる商標調査と商標登録の出願手続きを済ませて公開した。約8カ月かけて選び直したのが、アーティストの野老(ところ)朝雄さんの作品。江戸時代に「市松模様」として広まったチェッカーデザインを日本伝統の藍色で描いたものだった。

 エンブレム問題は「透明性」が国民の信頼を醸成する重要なキーワードであると再認識させられた。新型コロナウイルスの感染拡大で、東京大会は来夏に延期された。世界的な景気後退が必至な一方、数千億円に上るとみられる追加経費で東京都民や国民に新たな負担を強いることになる。透明性の高い議論や丁寧な説明がなければ、再び不信感が高まりかねない。【新井隆一】

新井隆一

毎日新聞大阪本社運動部。1977年、東京都生まれ。2001年入社。大阪運動部、松山支局、姫路支局相生通信部を経て、07年秋から大阪、東京運動部で勤務。リオデジャネイロ五輪、陸上世界選手権(モスクワ、北京、ロンドン)、ラグビーワールドカップ(W杯)ニュージーランド大会などを取材。高校野球の監督経験もある。