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地球温暖化に本気で取り組む覚悟はあるのか、首をかしげる。
1月に本格始動した「パリ協定」に基づき国連に提出する温室効果ガス削減目標について、政府は据え置くことを決めた。
日本の目標は「2030年度までに13年度比で26%減」だ。協定は、批准国が5年に1度、目標を見直すことを義務づけている。今年はその年に当たる。2月末の提出期限を超えて政府内で調整したが、削減幅の上積みは見送った。
背景には、エネルギー政策をめぐるジレンマがある。日本は温室効果ガスを大量に出す石炭火力発電への依存度が高い。9年前の東京電力福島第1原発の事故後、電力不足を石炭火力で補ってきた。
30年時点の電源構成は、原発の再稼働を前提に策定されているが、再稼働は進まない。そんな中で高い削減目標を掲げれば、電力の安定供給に支障をきたすとの考えが政府内にはある。
だが、国際社会が「脱石炭」を模索する中、こうした日本の姿勢は許容されるものではない。これでは温暖化対策に及び腰だとの印象が固定化してしまう。
温暖化対策は焦眉(しょうび)の急だ。パリ協定は、産業革命以降の気温上昇を2度未満、できれば1・5度未満に抑えることを目指す。
気温は既に1・1度上昇している。各国が現行の目標を達成しても温暖化の被害は避けられないと言われている。国連が各国に「野心的な目標」を求めるのは、そうした理由からだ。
日本は世界5位の排出国だ。温暖化対策に関する国際ルール「京都議定書」を生んだ国でもある。いま対応可能な削減策だけを積み上げる手法では、難局を打開できない。あるべき姿を高い目標として掲げ、その実現に全力を尽くすことが求められている。
電源構成を盛り込んだエネルギー基本計画は今年度が見直しの時期に当たる。再稼働が進まない現実に即して原発の依存度を下げ、再生エネルギーの比率を高めることは当然だ。
政府は目標の提出に際し、さらなる削減努力のための検討を始めると約束した。削減幅の上積みはもちろん、温暖化対策への決意が具体的な政策に結びつくよう、議論し直すべきだ。
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