メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ALL FOR 2020

東京へ ともに歩む

毎日新聞

ボート・カヌー会場の移転候補地となった宮城県の長沼ボート場を視察する小池百合子都知事。地元住民から大歓迎を受けた=宮城県登米市で2016年10月15日午後1時半ごろ(代表撮影)

Field of View

失敗した「ちゃぶ台返し」 小池都知事、会場見直し断念 東京開催決定から7年⑤

 新たな「戦い」の火蓋(ひぶた)が切られた。東京オリンピック・パラリンピックを開催する東京都を取材するため、運動部から社会部に異動した2016年10月。その直前、東京都の小池百合子知事による水泳、ボート・カヌー、バレーボールの3会場新設見直しが始まった。開幕まで4年を切り、「あり得ない」と思った。

小池百合子氏は「五輪経費・運営の見直し」などを公約に掲げ都知事に当選。直後のリオデジャネイロ五輪では閉会式で五輪旗を受け取った=リオデジャネイロのマラカナン競技場で2016年8月21日、和田大典撮影

 国際オリンピック委員会(IOC)はかつて、欧州貴族が始めたサロンのような存在だった。五輪のグローバル化は進んだが、アマチュア主義を背景にした私的クラブの伝統は今も息づく。

東京五輪の経費削減を目指す4者協議で小池百合子東京都知事(右端)に意見を述べる大会組織委員会の森喜朗会長(左端)=東京都港区のホテルで2016年11月29日午後3時3分、佐々木順一撮影

 スポーツの独立性、高潔性を守ることに重きを置いており、五輪の価値を下げかねない都の提案に耳を貸すとは思えなかった。

 世論は正反対に動いた。当時の本紙世論調査では、74%が会場見直しを支持。「復興五輪」を旗印にボート・カヌー会場の移転候補地となった長沼ボート場(宮城県登米市)については、知事の独断にへきえきしていた都庁内部でさえも「移転か」との空気が流れた。

 小池知事とIOCのトーマス・バッハ会長の会談では、既存施設活用の「持続可能性」をアピールする小池知事に対し、バッハ会長は「実行可能性」を強調。国際競技団体や大会組織委員会からも難色を示され、壮大な「ちゃぶ台返し」は失敗に終わった。

 その後、猛暑懸念によるマラソンの札幌移転はIOC主導で進められ、新型コロナウイルスの感染拡大による開催延期は政府が提案した。

 五輪を開催する意義は何か。開催都市の存在感が希薄になる今なら「ちゃぶ台返し」の意図を理解できる。【芳賀竜也】

芳賀竜也

毎日新聞東京本社運動部副部長。1976年、北海道生まれ。2002年入社。北海道報道部を振り出しに東京運動部で水泳、フィギュアスケート、東京社会部で東京都庁を担当。東京パラリンピック取材班デスク。五輪・パラリンピックを夏季2回、冬季4回取材。初取材の06年トリノ冬季五輪では入国直後に迷子になり、気付くと中国チームの選手村にいた。