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外出自粛で追い込まれる個人経営の飲食店 業界関係者が応援サイト立ち上げ

ビアンカーラの持ち帰りメニューの一部。ラム肉のクミン炒め(左)、菜の花とベーコンのキッシュに皮付き新たけのこしょうゆ焼き(右)

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 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う外出自粛要請などを受け、個人経営の飲食店が苦境に立たされている。東日本大震災などを乗り越えてきた業界関係者らがこうした個人店を支援するサイト「Save Restaurants!(セーブ・レストランツ!=飲食店を救おう、の意)」を立ち上げた。すでに東京や大阪、長野、福岡などで240店舗以上が紹介され、さらに拡大する予定だ。生き残りをかけた取り組みを探った。【和田浩明/統合デジタル取材センター】

「みなつぶれてしまう」募る危機感

 「お客さんが来てくれない」「予約、売り上げが急減している」。3月下旬、飲食店経営者らから次々に上がるこうした声を聞き、フードジャーナリストで信州大特任教授の鹿取みゆきさん(59)は危機感にさいなまれていた。「このままでは、飲食店がみなつぶれてしまう」

フードジャーナリストの鹿取みゆき信州大特任教授=本人提供

 その頃、鹿取さんは、知人の米国人ワインジャーナリスト、アリス・フェアリングさんが、新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けたレストランやショップのワイン販売努力をウェブサイトで紹介していることに気付いた。レストランなどはテークアウト(持ち帰り)販売を始め、ツイッターなどで発信するようになっていた。

 米国では新型コロナウイルスの感染者が36万人と世界最大になり、死者も1万人超まで急増。各州で外出規制令が出され、レストランなどが軒並み営業中止に追い込まれている。フェアリングさんの取り組みは、苦境にある店を少しでも支援したいとの思いから始まったものだった。

 同じように苦しむ日本の飲食店を支援できないか。そう考えた鹿取さんは知人のソムリエールでワインアロマセラピー協会会長の蜂須賀紀子さん(48)に相談した。蜂須賀さんは2011年3月の東日本大震災当時に都内で夫とフランス料理店を経営していたが、地震直後の自粛ムードの中、店の売り上げが低迷した経験を持つ。

 蜂須賀さんは19年10月の台風19号で被災したリンゴ農家への支援活動「Cook For Japan(クック・フォー・ジャパン)」に関わった料理人の石川雄一郎さん(38)に連絡した。支援のオンラインマップづくりを担当した石川さんは快諾し、4月はじめにはサイトが立ち上がった。

衛生対策徹底も客急減、テークアウトでしのぐ

 セーブ・レストランツで紹介されている店舗の一つで、自然派ワインに合わせた料理が売り物のレストラン、ビアンカーラ(東京都三鷹市)を4月3日の午後に訪れてみた。

 近くの井の頭公園は桜の花が満開だった。しかし、「お花見は自粛願います」の看板があちこちに立てられ、ベンチにも「立ち入り禁止」と書かれた黄色いテープがぐるぐると巻きつけられ、座ることができない。園内の人出は通常の週末より少なめに見えたが、犬を散歩させたり子供を遊ばせたりする人たちも結構いた。

 駅の真ん前に位置するビアンカーラでは、店主の小平尚典さん(43)がシェフと作業中だった。小平さんによると、小池百合子都知事が新型コロナウイルスの感染拡大抑止のため週末の外出自粛を記者会見で求めた3月25日以降、客足は目立って減り始めたという。「今週はさんざんで、来店する人はパラパラという感じ」と小平さんは話した。

 同店では、衛生対策として入店者にはまずアルコール消毒液で手指を消毒してもらう。さらに米国などで「ソーシャルディスタンシング(対人距離の確保)」で必要とされる1・8メートルの距離を利用客が確保できるよう、テーブルとカウンターで15席ある店内は3組までに制限している。

 小平さんは米北西部ポートランドと縁があり現地もよく訪れていたため、「いずれ日本でも米国と同じような感染拡大や外出規制が起こる」と見ていた。25日にはテークアウトを始め、ツイッターで発信。3000円と5000円のディナーコースや、単品の注文も受けている。他店のテークアウト注文と合わせて配達する「デリバリーシェア」も行うなど、さまざまな対応を工夫している。

テークアウトを始めた三鷹のレストラン、ビアンカーラと店長の小平さん。メニューには3000円と5000円のディナーや単品がある。入店したお客さんには、アルコール消毒液(中央)で手指の消毒をしてもらっている=2020年4月3日午後3時3分、和田浩明撮影

 テークアウト注文は大きな助けだ。ただ小平さんは「今後どうなるか」と不安げだ。現状はディナーにワインをつけることができず、以前より売り上げが下がる。「ポートランドではワインは量り売りができる。特例でなんとかならないか……」

 政府の支援策も調べたが「支払いまでの期間が長かったり条件が厳しかったりで、個人店では利用しにくい」と話す。

 新型コロナウイルスによる外出自粛などは長期化することも予想される。小平さんは「飲食店は消費の最前線。我々が止まれば、そこにお酒を卸す業者や食材を供給する農家などにも影響が出る」と指摘する。

先の見えない自粛

 今回の自粛について、石川さんは「いつまで持ちこたえなければいけないのか、誰にもわからない」と先の見えない現状を懸念する。東日本大震災当時、銀座のビストロで働いていたが「売り上げは震災の月はひどかったものの4月にはもちなおし、6月には通常に戻っていた」という。

 蜂須賀さんは、今回は新型コロナウイルスの感染リスクがあるため「通常のように来てくださいとお客さんに働きかけられないところがつらい」と指摘する。自らも飲食店の経営に関わった経験などから「飲食店は家賃など固定費もかかる。いっそ店を閉めるかわりに補償してくれればよいのですが……今は中ぶらりんで真綿で首を絞められているようなものだと思います」と話す。

「お花見は自粛願います」の看板が立つ井の頭公園。桜は満開だった。2020年4月3日午後2時41分、和田浩明撮影

 鹿取さんらはセーブ・レストランツ!への参加を呼びかける文書で、こう書いている。「飲食店は、日本の食やワインを味わったり、お客さんの手に届けたりする大切な窓。窓を開ければ、その向こうには、日々の生産活動を続ける野菜や果樹の農家、豚や牛や鶏などの畜産農家、漁師さん、そしてワインのつくり手たちの姿が見えてきます」。我々は、日本の食のつながりを守れるのか。新型コロナウイルス禍が突き付ける問いは重い。

和田浩明

1991年4月入社。英文毎日編集部、サイバー編集部、外信部、大阪社会部を経て2003年10月から08年3月までワシントン特派員。無差別発砲事件、インド洋大津波、イラク駐留米軍や大統領選挙を取材。09年4月からはカイロに勤務し、11年1月に始まった中東の民主化要求運動「アラブの春」をチュニジア、エジプト、リビア、シリア、イエメンで目撃した。東京での中東、米州担当デスク、2度目のワシントン特派員などを経て2019年5月から統合デジタル取材センター。日本社会と外国人住民やLGBTなどの今後に関心がある。

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