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社説

緊急事態と経済対策 生活危機に応えていない

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 新型コロナウイルスの急速な感染拡大を受け、政府は緊急事態宣言を7都府県に発令した。事業規模108兆円に上る過去最大の経済対策も決めた。

 宣言は1カ月間、外出自粛などの徹底を促すもので、景気をさらに悪化させる恐れがある。大型対策とセットで国民の不安を和らげる狙いだろう。

 安倍晋三首相は記者会見で「日本経済はまさに戦後最大の危機に直面している」との認識を示した。そのうえで今回の対策の規模が日本の国内総生産(GDP)の約2割に当たり、各国の経済対策でも最大級であることを強調して、「強い危機感の下、雇用と生活を守り抜く」と述べた。

 といっても景気への影響が心配され始めたのは2カ月以上も前だ。日々のやりくりに窮し生活の危機に直面している人は多い。首相が深刻な事態と認識しているのなら、もっと早く支援に取り組む必要があった。いくら規模を誇示しても国民の不安は収まらない。

遅く不十分な現金給付

 問題が多いのは、家庭への現金給付だ。収入が減った低所得者などに1世帯30万円を配るという。給付自体は必要な措置だが、遅すぎると言わざるを得ない。

 対策を盛り込んだ今年度の補正予算案が成立するのは今月下旬の見通しだ。生活に困っている人たちの手元に届くのは来月以降になってしまう。これではセーフティーネットの役割を果たせない。

 感染対策が遅れた米国ですら現金給付を今月中に行う予定だ。本来は、先月成立した今年度の当初予算で対応すべきだった。予算の組み替えに応じない政府の硬直的な姿勢が遅れを招いた。

 給付を受け取るには、対象者が市区町村窓口に申告する仕組みにした。政府は給付の条件である収入を事前に確認する作業が不要になり手続きが迅速になると説明するが、想定されている対象は1300万世帯に上る。申告が集中すると手続きも混乱し、かえって時間がかかる懸念がある。

 支援対象がかなり限られていることも問題だ。政府が以前から財政支援の基準としてきた住民税非課税世帯の収入を今回も基本にしたため、年収700万円が一気に350万円に半減しても給付を受けられない場合がある。

 今回の景気悪化は、買い物や外食、レジャーといった「需要」が一気に消え、関係業界で働く人の給料が突然大幅に減ったことが特徴である。対策は生活へのダメージの大きさを踏まえていない。

 英国政府は休業した企業の従業員に給与の8割を3カ月間補償する。日本も給付の追加を積極的に検討すべきだ。対象世帯を見直し方法も簡素化する必要がある。

 体力の弱い中小企業の支援も優先課題だ。緊急事態宣言に伴い、飲食や小売り、レジャー施設などの休業がさらに増えると見込まれ、倒産や失業の増加が懸念されている。対策は最大200万円の中小企業向け給付金創設などを盛り込んだ。

長期戦の備えを万全に

 だが今回の給付金だけでは経営が維持できない場合があるだろう。状況に応じて追加すべきだ。

 緊急事態宣言が1カ月で解除できる保証はない。発令した欧米では期間が長引いている。ドイツは零細企業への助成は3カ月分行う。日本も長期戦に備え補償に万全を期さなければならない。

 東京都は、休業に協力した中小零細企業を支援する協力金の創設を検討している。ほかの自治体も積極的に取り組んでほしい。

 十分な生活支援を行うには財源確保が欠かせない。政府は今回、財源として新たに16兆円の国債を発行し、1000兆円超の借金はさらに増える。

 非常事態とはいえ、将来世代へのつけ回しはできるだけ膨らまないようにすべきだ。不要不急の事業の見直しが急務だ。

 生活支援で多くの問題を抱えているのに、対策は景気刺激に前のめりな姿勢が目立つ。アベノミクスへの打撃を極力抑えたいとの思惑が働いているのだろう。

 首相は「経済をV字回復させる」と繰り返し、対策には観光や飲食向けのクーポン券など2兆円近くが盛り込まれた。だが感染収束のめどが立った段階で具体的に示した方が効果的なはずだ。

 経済の基盤である国民生活と雇用をしっかり守ることが景気回復の大前提だ。政府はきめ細かな生活支援に全力を注ぐべきだ。

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