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日韓歴史摩擦の構造 アイデンティティーが衝突=慶応大名誉教授・小此木政夫

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「3・1独立運動」を記念する式典で万歳三唱する韓国の文在寅大統領(手前左)=ソウルで3月1日、ロイター
「3・1独立運動」を記念する式典で万歳三唱する韓国の文在寅大統領(手前左)=ソウルで3月1日、ロイター

 なぜ日韓歴史摩擦はかくも強烈かつ執拗(しつよう)に継続するのだろうか。現在、最大の争点になっているのは、第二次世界大戦末期に動員された元朝鮮人徴用工の処遇であり、個人賠償を容認した韓国最高裁判所の判決=1=である。しかし、巨視的に見れば、それらの背後にはより本質的ないし構造的な問題が存在する。

 第一に指摘しなければならないのは、歴史摩擦が日本人と韓国人のアイデンティティーの衝突ないし非両立性に起因するという厳然たる事実である。

 一般的に、アイデンティティー(同一性)とは、歴史、宗教、文化、言語、習慣、エスニシティー(民族性)などに基づく自己認識であり、他者の承認によって安定化する。さらに、それを基盤にして、民族的な統合や繁栄を求めるナショナリズムが成立する。したがって、日韓の歴史的アイデンティティーが衝突すれば、それはナショナリズムと連結して、「反日」や「嫌韓」感情をかきたてざるを得ない。

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