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市役所壁に「感謝」描こう Kobe Mural Art Project 秋田大介さん=中川悠 /大阪

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神戸市・三宮のセンタープラザ西館の壁面を飾るミューラルアートと秋田さん=中川悠さん撮影 拡大
神戸市・三宮のセンタープラザ西館の壁面を飾るミューラルアートと秋田さん=中川悠さん撮影

Kobe Mural Art Project代表

 市役所の壁がキャンバスに!? 今年の秋に解体を予定している神戸市役所2号館の外壁に巨大なアート作品を描く取り組みが注目を集めている。

 市役所2号館は築62年。当初は大きなガラス窓が壁面にずらりと並ぶ近代的な建物だったが、1995年の阪神大震災で6階が崩壊。壁面のガラスもほぼ全て割れ、修復で大きな壁ができた。あれから25年。老朽化により取り壊されることが決定した。

 「神戸の町の復興を見守ってくれた建物に、市民みんなで“ありがとう”を伝えたいんです」。そう話すのは「Kobe Mural Art Project」の代表である秋田大介さん(43)だ。

 ミューラルアートとは、壁面の所有者の同意のもと、アーティストがスプレーなどを用いて描く作品のこと。許可のない落書きとは異なる。市役所職員でもある秋田さんは2018年12月、ミューラルアーティストと市民が一緒になって2号館の南北2面の壁(縦約10メートル、横約30メートル)に作品を描き上げるプロジェクトを発足させた。

 もう一人の仕掛け人が、ミューラルアートのイベント「POW!WOW!JAPAN」のディレクター、岡本絵美里さん(40)。数々のアートフェスティバルの開催実績を持つ。

 2人の出会いは16年。岡本さんの活動を秋田さんがサポートする形で、六甲アイランドにある学校「カネディアンアカデミー」を中心にミューラルアートを制作した。17年には「港都KOBE芸術祭」の関連プロジェクトとして、メリケンパークやセンタープラザなどの壁面に作品を描いた。巨大な壁面いっぱいに広がるアート作品は近年、写真スポットとしても若い世代に人気を呼んでおり、観光の活性化にも一役買っている。

 この取り組みにはさらに狙いがある。秋田さんは「神戸の街でアーティストが食べていける仕組みを作りたい」と話す。今回壁面アートを担当するのは、作風や神戸とのゆかりから選ばれた2組のアーティスト。制作費用はインターネットで資金を募るクラウドファンディングを活用し、500万円以上を集めることに成功した。

 「アートに彩ってほしい場所が実はたくさんある」と秋田さん。老朽化した団地の壁、山手に続く階段、湾岸地帯の倉庫……。秋田さんの思う未来には、カラフルに彩られた神戸の街が広がっている。

 今回の取り組みが成功すれば、描きたいという次の作家が現れる。それに呼応するように市役所や物件のオーナーが描いてほしいと手を挙げる。今回の制作依頼額を今後の基準にできれば、「市民によってアーティストが正しく評価され、アーティストが育つ街」の一歩を踏み出せるはずだ。

 市役所2号館では、秋の解体までにミューラルアート制作の現場が公開される予定だ。「アートができる過程を現地で感じつつ、アーティストを応援しにきてほしい」と秋田さん。震災から25年。神戸の街にまた一つ、新しい文化が生まれる。<次回は5月15日掲載予定>


 ■人物略歴

中川悠(なかがわ・はるか)さん

 1978年、兵庫県伊丹市生まれ。NPO法人チュラキューブ代表理事。情報誌編集の経験を生かし「編集」の発想で社会課題の解決策を探る「イシューキュレーター」と名乗る。福祉から農業、漁業、伝統産業の支援など活動の幅を広げている。

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