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今週の本棚・なつかしい一冊

角田光代・選 『リチャード・ブローティガン詩集』=リチャード・ブローティガン著、中上哲夫・訳

リチャード・ブローティガン詩集(寄藤文平・絵)

 (思潮社 1923円)

 不思議なことに、会話をするわけでもないのに、私の家の猫はやさしい、ということがわかる。リチャード・ブローティガンという作家も、会ったこともないけれど、かなしいくらいやさしい人だとはっきりとわかる。そのやさしさは、本人をも傷つけただろうと思うほど。

 私がこの作家に出会ったのはもの書きとしてデビューして一年後、作品は『リチャード・ブローティガン詩集 突然訪れた天使の日』だ。それまで詩は苦手だったのに、この作家の短い言葉はすーっと、空気みたいに自然に胸に入ってきて、見たことのない光景を見せ、その光景の清潔さ、静けさに私は見入った。静かなのに、音楽っぽくもある。

 そして、不思議なやさしさがある。やさしいことは書かれていない。かなしいことも書かれていない。言葉は短く、唐突で、ちょっと皮肉っぽいユーモアがある。なのに、言葉と言葉の隙間(すきま)から、行と行のあいだから、やさしさとかなしみが漏れ出してくる。それが、当時私がすがるように聴いていたロック音楽と似ていた。私は音楽を聴くようにくりかえし詩を読んだ。

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