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せきしろさん×又吉直樹さん 日常の隙間をついた404句

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自由律俳句の魅力について語るせきしろさん(右)と又吉直樹さん=東京都港区で2020年4月3日、宮本明登撮影
自由律俳句の魅力について語るせきしろさん(右)と又吉直樹さん=東京都港区で2020年4月3日、宮本明登撮影

 五七五の定型や季語にとらわれない自由律俳句。その魅力にはまった文筆家のせきしろさんと、芸人で作家の又吉直樹さんによる句を集めたシリーズ第3弾『蕎麦湯(そばゆ)が来ない』(マガジンハウス、1540円)が刊行された。思わず膝を打つものから感傷的な味わいのものまで、嚙(か)めば嚙むほど心に染み入る全404句を収める。【清水有香】

 面白い本はページをめくる手が止まらないというが、本書はちょっと違う。

 <おかしいな誰もいない>(せきしろ)

 <写真にうつらない月を仰ぐ>(又吉)

 一句一句に目が留まる。右ページにせきしろさん、左ページに又吉さんの句が、共通のテーマも脈絡もなく並ぶ。身に覚えのある場面を思い返したり、あったかもしれない情景に妄想を膨らませたり。気づけば物語が動き出し、なかなか先へ進まない。

 <使ってない場所に日が当たっている>(せきしろ)

 <用途の無い棚を眺めている>(又吉)

 何でも無い日常の、その隙間(すきま)をつくような視線に、はっとさせられる。2人は普段、街を歩いていても、ゴミや排水溝、エアコンの室外機を見てしまうという。「あと、干されているタオルをすごい見る」とせきしろさん。「見ちゃうというか、考えちゃう。例えば自転車が捨てられてたら、なんでそれがあるのか、持ち主はどうだったのかとか」。その話に「名称のないような場所が街中にはいっぱいあって、そういう所が自然と目に入る」とうなずく又吉さん。「昔、吉祥寺の自動販売機に張り紙があって、『いたずらしたら○○。ちなみに私は空手有段者です』って書かれていた(笑い)。この脅し文句なんやろ、って。怖さと恥ずかしさみたいなのがあって、その張り紙をせきしろさんも見ていたんです」

 <土産屋の暗さと店員の眼光>(せきしろ)

 <この話し方の店員からは買わない>(又吉)

 同じ題材でもそれぞれの個性がにじみ出る。2人にとって自由律俳句の魅力とは何だろう。せきしろさんは「自動販売機の上を見て、自動販売機の上って汚れてるんだと思うじゃないですか。それを言えるので助かっています」と独特の言い回しで語り、「別に言わなくていいことを言っていいんだっていう感覚ですね」と加える。又吉さんは「背中かゆい時にどこがかゆいかよく分かってなくて、かいてもらってああここやったんや、みたいな発見あるじゃないですか。せきしろさんとかの句を見た時にそれに似た感覚が…

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