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ヤングケアラー~幼き介護

就活の壁にぶつかる元ヤングケアラー 薄い現実感「少しずつ自分と向き合っていかないと」

青空の下、ビル群を見つめる祐二。知人のつてで月2回の仕事を得た。「運転免許をとろうと、おととい入校の手続きをしました」。模索は続く=東京都千代田区で2020年3月18日、小川昌宏撮影

 ヤングケアラーは、人格形成や十分な教育を受けるべき時期に家族の介護に追われた結果、自立する時期になって社会の壁にぶつかることがあります。高次脳機能障害の母親と向き合う緒方祐二さん(仮名)は、ようやく母のケアが一区切りして就職を考え始めた直後、現実の厳しさを目の当たりにしました。(本文は敬称略)【ヤングケアラー取材班】

 2019年9月11日。東京・渋谷の職業紹介会社を訪れた緒方祐二(23歳、仮名)は、動悸(どうき)が激しくなるのを感じた。机に並べられた求人情報は非正規が多く、正社員募集も「アルバイトの延長のような」職種ばかりだった。頭で分かっていたつもりの現実を突きつけられた。

 一人息子の祐二は、高次脳機能障害を発症した母サトミ(仮名、現在60歳)のために、大学受験を断念。母の世話に専念してきた。それが一区切りして、これからだと思ったのに。「高卒で23歳。自分なりに親を看病してきたけれど、全く無意味だったんだな」

 帰りにコンビニ弁当を買って家で開けたが、全く喉を通らなかった。動悸は1週間収まらず、心療内科に通った。今も毎月のカウンセリングが欠かせない。先は見えない。どうやって生きていく? 今も暗闇の中にいるようだ。

    ◆ ◆

 サトミは祐二が小学5年の秋、ママ友の集まりで突然倒れた。授業が終わって祐二は先生に呼ばれたが、それからどうしたか、あまり記憶がない。

 母は脳出血だった。手術をして半年間入院した。中学受験を目指していた祐二は、平日は遅くまで塾の自習室に残り、週末に父と面会に行った。

 翌年の1月、自宅に戻ったサトミはまるで別人になっていた。体は動くし食事やトイレも自分でするが、一日中、意味不明な話をしている。「あの野郎」「ばか野郎」。乱暴な言葉も混じり、話しかけても会話は成立しなかった。「お母さん、怪獣みたい」。教育熱心で優しかったサトミはそこにはいなかった。

 祐二が中高一貫校に合格して中学生になると、サトミは四六時中、意味不明な罵詈雑言(ばりぞうごん)を叫び続けるようになった。内容はリピート再生のように同じ。祐二と父の前でだけそうなり、よその人がいると黙る。それが現在も続いている。今年3月に取材に応じた日。「さっき、僕が家を出る時も叫んでいましたよ」と祐二はこともなげに言った。

    ◆ ◆

 サトミが発症した後、料理や掃除などの家事は滞った。放置したゴミや食品から小さな虫がわき、点々と飛び回る。チョウバエにタバコシバンムシ。祐二は害虫に詳しくなった。

 洗濯だけはどうにか自分でこなした祐二だが、間に合わないと制服のワイシャツを何日も着回し、生乾きでも着ていた。主食はコンビニの弁当やおにぎりにレトルト食品。中高6年間、朝食はほとんど食べたことがない。「いつもおなかがすいてましたね」

 サトミは午前7時ごろから夜、眠りにつくまで叫び続ける。父は朝仕事に出かけ…

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