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論の周辺

古井由吉さんの批評眼

「新潮」2020年5月号

 「鎮花祭、花鎮めの祭りというもののあることを、毎年、住まいの正面に咲き盛る花の散る頃になると思う」「散る花とともに四方へ飛び散る悪疫を、歌舞もまじえて、宥(なだ)め鎮めようとするらしい。落花と悪疫とは、結びつきにくいようで、どこかで通じそうなところがある」

 作家、古井由吉さんの連作短編集『やすらい花』からの引用だ。2月に亡くなった人の作だから、緊急事態に至った新型コロナウイルスの拡大を知っての筆ではない。それどころか11年前、雑誌に掲載された表題作の一節である。

 揺るぎない独自の文体で高い評価を受けてきた作家が、優れた文明批評家でもあったことはあまり知られていない。現実の事象にかかずらわることが芸術的でないと見なされがちな国では、必ずしも褒め言葉にならないだろう。実際、4月に出た文芸各誌が追悼特集を組み、多くの作家らが執筆した中でも、その批評眼についてはごく控えめに触れられるだけだった。

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