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余録

「人々は耐えがたい混乱と苦痛のあまり身をもてあまし…

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 「人々は耐えがたい混乱と苦痛のあまり身をもてあまし、わめき散らし……狂気した人々が街頭をはしりまわる光景は、陰惨をきわめた」。この混乱は1665年のペスト流行時のロンドンの記録である▲「アヌスミラビリス」。ラテン語の「驚異の年」とは、同年から翌年のロンドン大火にいたる歴史的災厄(さいやく)の続いた時代に書かれた詩人ドライデンの長編詩の題である。彼はペスト禍からの避難先で、英国の再生をたたえる詩を書いた▲後にアヌスミラビリスは古典力学の創始者ニュートンの偉大な業績をたたえる言葉となる。ニュートンはペスト禍で閉鎖された大学から故郷に戻り、存分に思索の時間を得た1年半の間に万有引(ばんゆういん)力(りょく)発見などの3大業績を達成したのだ▲悲惨な疫病を逃れる巣ごもりから生まれた「驚異の年」――人類の大きな前進である。「創造的休暇」とも呼ばれるニュートンのこの時期だが、今、新型コロナウイルス禍で巣ごもりを強いられる私たちも勇気づけられる逸話(いつわ)だろう▲一気に進んだテレワークは、人々の「自宅からの発想」のネットワークで世界を変えるかもしれない。14世紀のペスト禍がルネサンスの触(しょく)媒(ばい)になったように、新たな技術、価値、産業の培養土(ばいようど)にもなりうる私たちのコロナ体験である▲国際通貨基金(IMF)が「世界恐慌以来」の経済危機というコロナ禍だが、文明を破壊する災厄から新たな文明を芽吹かせてきた人類である。後の世の人々は2020年をアヌスミラビリスと呼べるだろうか。

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