メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

今週の本棚

佐藤優・評 『武器としての「資本論」』=白井聡・著

『武器としての「資本論」』

 (東洋経済新報社・1760円)

労働者は「包摂」を超えられるか

 カール・マルクス『資本論 第一巻』の視座から現代資本主義を読み解こうとした意欲的な作品だ。マルクス経済学者の宇野弘蔵氏と哲学者の柄谷行人氏の知的営為を白井聡氏は真摯(しんし)に受け止め、発展させようとしている。資本主義は労働力の商品化によって、商品が繰り返し生産されるシステムだ。その過程で、労働者と資本家という階級も再生産される。再生産は単なる物やサービスに留(とど)まらず、イデオロギー(人間の行動に影響を与える思想)にも及ぶ。この構造を白井氏は「包摂」という概念で説明する。<資本の側は新自由主義の価値観に立って、「何もスキルがなくて、他の人と違いがないんじゃ、賃金を引き下げられて当たり前でしょ。もっと頑張らなきゃ」と言ってきます。それを聞いて「そうか。そうだよな」と納得してしまう人は、ネオリベラリズムの価値観に支配されています。人間は資本に奉仕する存在ではない。それは話が逆なはずだ。けれども多くの人がその倒錯した価値観に納得してしまう>

 評者も認識を共有する。もっとも「包摂」に関しては、『資本論 第三巻』でマルクスが擬制資本と位置づけた株式によって完成すると思う。紙幅の制約があってのことと思うが、株価至上主義批判を理論的に展開すればより知的刺激に富む作品になったと思う。

この記事は有料記事です。

残り799文字(全文1375文字)

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. コロナで変わる世界 <医療編 インタビュー②>大山加奈さん コロナ禍での不妊治療「不安だったが待っていられなかった」

  2. フォーカス 松下洸平 ドラマ「#リモラブ」青林風一役 恋がほぐす頑固な心

  3. ORICON NEWS 映画『コナン』来年4・16公開決定 高山みなみ「ワクワク感高めていきたい」 新プロジェクトも発表

  4. 不法残留の疑い ベトナム人3人逮捕 梨の窃盗事件で家宅捜索 埼玉県警

  5. 特集ワイド 国民・山尾議員、一躍「党の顔」 「永田町の常識」と決別、新たな野党像模索

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです