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118人集団感染し「病院化」した障害者施設 汗だくで支えた職員の苦悩

レッドゾーンの入り口(右)にある防護服の着脱場所で、中に入る準備をする医師や看護師ら。ガウンが不足しているためゴミ袋で代用し、感染症専門の看護師(中央)が、ウイルスの侵入を防ぐために手袋と服のすき間をテープで目張りしている=千葉県東庄町の北総育成園で2020年4月17日午後4時26分、黒田阿紗子撮影

 新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生し、入所者が療養を続ける障害者支援施設「北総育成園」(千葉県東庄町)に設置された支援対策本部が、毎日新聞の取材に応じた。感染者発生を受けて官民が協力して施設を「病院化」した初めてのケースで、入所者の症状は回復傾向にあるという。現地では防護服などが不足する中、職員らが入所者の身の回りの支援を続けていた。

 入所者のケアを終え、感染の恐れがある「レッドゾーン」から防護服の代わりにゴミ袋をまとって出てきた男性職員は、全身ぐっしょりとぬれていた。出入り口で看護師が、ウイルスが体に付着しないよう細心の注意を払い、ゴミ袋や手袋を外すのを手伝う。2次感染を起こさないための作業だ。3分以上かけてすべてを外し終えると、職員の表情が少しゆるんだ。

 北総育成園は、千葉県船橋市が設置し、社会福祉法人さざんか会(同市)に運営を委託。20~80代の知的障害者ら70人が入所する。3月27日までに15人が発熱し、検査結果を踏まえ県は28日に集団感染を公表した。感染者は入所者の7割以上にあたる51人、職員67人のうち40人、家族などを含めると118人に及んだ。福祉施設としては国内最大規模の集団感染となった。

 30日には、国立感染症研究所の感染症専門医など複数の医師が施設にそろった。当時、新型コロナウイルスの感染者は症状の有無にかかわらず入院することになっていたが、数十人分の受け入れ先はない。数人の重症者のみ搬送し、大半の患者と入所者は施設内にとどめ、治療することですぐに意見はまとまった。

 施設の実質的な「病院化」だ。県の要請で、複数の医師が交代で施設に入り、日中は1日2回の回診を行い、夜は看護師2人が泊まり込んで付き添う仕組みを作った。

 ウイルスが飛散しやすい居住スペースは「レッドゾーン」に設定。防護服を着た職員や医療チーム以外は出入りできない。対策本部は、消毒を施した「クリーンゾーン」の体育館に設置。居住スペースと体育館を結ぶ廊下や防護服の着脱場所を「セミクリーンゾーン」にして、感染者と濃厚接触した職員は、クリーンゾーンには入らないよう動線を分けている。

 記者は対策本部の指示に従い、マスクを着用し、クリーンゾーンと、セミクリーンゾーン内にある防護服の着脱場所から2メートル以上離れた許可を得たエリアで取材した。床には、ガムテープで線が引かれていた。「ここから先は入らないでください」。職員の強い語気に、一瞬身構えた。

 施設では、入所者と接する際に着用する感染防護に必要な物資が不足しはじめた。レッドゾーン内で着用する不織布のガウンやゴーグル、医療用高機能マスクなどだ。今月15日からはガウンの代わりにゴミ袋をテープで留めて代用しているという。実際の着脱場所では、これからレッドゾーンに入る看護師らが「蒸れて暑いので、熱中症に気をつけて」「こまめに着替えた方がいい」と互いに声を掛け合っていた。

 北総育成園の白樫久子副園長(55)によると、現在も入所者を直接ケアしている施設職員は管理職などを除きわずか7人。同じ法人の別施設や、船橋市から応援職員を派遣してもらい、急場をしのぐ。平日昼間のシフトは以前は12人だったが、今は市などから応援を入れても5人を確保するのがやっとだ。夜間も当直体制は続く。「人手のかかる入浴にはなかなか対応できず、入所者には不便をかけている。職員も精神的にギリギリの状態で頑張っている」と話す。【黒田阿紗子、上東麻子】

 国内最大規模となる新型コロナウイルスの集団感染が発生した障害者支援施設「北総育成園」(千葉県東庄町)。関係者のミーティングは互いに距離を取りながら行うなど手探りの対応が続いている。

 北総育成園内の施設はすべて個室だ。支援対策本部によると、当初は感染の有無で部屋を分けることも検討したが、知的障害の特性から、移動した入所者が元の部屋に戻った…

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上東麻子

1996年毎日新聞入社。佐賀支局、西部本社、毎日小学生新聞、東京本社くらし医療部などをへて2020年から統合デジタル取材センター。障害福祉、精神医療、差別、性暴力、「境界」に関心がある。日本新聞協会賞を受賞したキャンペーン報道「旧優生保護法を問う」取材班。共著に「強制不妊」(毎日新聞出版)。散歩とヨガ、ものづくりが好き。

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