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<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)>
「混沌(こんとん)を生きる母のいのち/愛を貫いた父のいのち/詩で立ち向かう息子のいのち」。3月末に出た藤川幸之助さん(58)の自選詩集「支える側が支えられ 生かされていく」の帯に、谷川俊太郎さんは書いた。「それぞれのいのちが愛おしい」
長崎で小学校の先生をしながら詩人を目指していた。そのとき、母が認知症になった。父は一心不乱に介護し、その無理がたたり急死する。封筒の遺言はひと言。「お母さんの世話は幸之助が一人でやっていくこと」。そのときから24年間。藤川さんは認知症の母と向き合い、詩を書き続けてきた。
介護体験。4文字でくくれるほど平穏な年月ではない。悲しく、絶望した日々。ウンコをまき散らす母。息を止めて床を拭く頭にヨダレがたれてくる。どこに行くかわからない。「ここに座っていろ!」。つり上がった自分の目。夕刻、明日こそやさしくなろうと思う。いらだつ僕を許してください。そしてまた、朝が来て……。
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