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社説

高松塚壁画の修理完了 文化財保存へ課題は残る

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 国民共有の宝を後世に継承していくために、知恵を絞らなければならない。

 奈良県明日香村にある高松塚古墳の国宝の石室壁画が、13年に及ぶ修理を終えた。

 壁画は、カビで黒ずむなど大きく劣化していた。発見時の鮮やかな色彩を十分には取り戻せなかったが、ひとまず息を吹き返したことに安堵(あんど)する。

 「飛鳥美人」を含む男女群像や四神図、星宿図など極彩色の壁画は1972年3月に見つかった。

 「戦後考古学最大の発見」と言われ、空前の考古学ブームとなった。美術史的にも価値は高い。

 文化庁が非公開で管理していたが、2004年にカビの大量発生が明らかになった。こうした管理上の問題に加え、人為ミスによる損傷の隠蔽(いんぺい)も発覚した。

 古墳の石室を解体し、墳丘から取り出したのは、これ以上劣化させないための苦渋の選択だった。

 近くの施設で行われた修理では、下地のしっくいを補強し、日本画修復の専門家がカビを丹念に除去した。酵素や紫外線を応用した新技術も取り入れた。

 今後は常設の展示施設を整備し、公開することを検討中だ。県と関係自治体は、近くのキトラ古墳などと併せて世界文化遺産登録を目指す。

 ただ、その場合「現地保存」という文化財の大原則から外れる問題が生じる。解体は当初から異論があった。修理後の壁画を古墳に戻すべきだという意見は根強い。

 しかし、古墳に戻して保存する技術は確立されておらず、現時点では難しい。

 極彩色壁画が見つかり、高松塚の失敗例を受けて保存のために壁画をはぎ取ったキトラも同様だ。

 保存技術の研究を粘り強く進めるべきだ。そのためにも、これまでの経緯を改めて検証し、美術史、考古学、保存科学などの専門家が共通の基盤を作る必要がある。得られる知見は将来、おおいに役に立つはずだ。

 今後、新たな壁画古墳が見つかった場合、現地保存の原則を守ることができるのか。失敗を繰り返さないようにしたい。

 国は苦い経験を教訓にしてほしい。高松塚の壁画が払った大きな犠牲を忘れてはならない。

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