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緊急事態を生きる

孤島にいる私たちが問う「つながり」の意味 見えづらい格差 臨床心理学者が読み解く世界

臨床心理学者の東畑開人さん=本人提供

 新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、人が集う場が次々と閉じられている。身体的な接触が感染リスクとなる中、オンラインで新たな人間同士の「つながり」や社会関係は構築できるのか。2019年に精神科の「デイケア施設」を舞台にした物語「居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書」(医学書院)で、「ただ、居ること」の難しさや意味を描いた臨床心理学者の東畑開人さんは、現状をどのように見ているのか。【塩田彩/統合デジタル取材センター】

 ――新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、人と人とが会う機会が極端に減り、人が集まる場も閉じられています。

 ◆知り合いがいる精神科デイケア(※)のいくつかに連絡していたのですが、休止したり規模を縮小したりしているところもあるようです。続けているところも、参加者に検温してもらったりマスク着用を義務づけたりして感染防止対策に必死に取り組んでいます。ただし、さまざまなことが中止になっていて、たとえばトランプゲームの「大富豪」をみんなでするのは禁止。みんなで集まって、同じものを触り、やり取りする行為には感染リスクがあるからです。大富豪は暇つぶしそのものですが、暇つぶしがいかにつながりを味わうものであったかを考えさせられます。

 そんな中で、デイケアに行けなくなる人も一定数出てきています。家族に止められるということもあれば、「マスクをつけるくらいならいかない」というメンバーもいます。気持ちはわかります。主観的にはマスクが「面倒くさい」とか「わずらわしい」という理由なのだと思いますが、少し離れたところから考えると、それまでは警戒せずにいられた場所が、警戒抜きではいられなくなったことへの反応なのだと思うからです。マスクをすることは、他者を恐れることです。それまで油断していられた居場所が、恐れるものがある場所になってしまったことを敏感に感じ取ったのではないでしょうか。

 一方で、国内の状況が深刻化するに従い、医療機関側もマスク着用を強く勧めるようになり、多くのメンバーが着用に協力しています。これも非常に示唆的です。リスク管理を求める公衆衛生意識と、個別のニーズに基づいたケアの意識とが対立し、葛藤しながら、ぎりぎりで居場所を成り立たせていく試みが行われているということです。そんな中で、メンバーが提案し、みんなで布マスクを作るなど、居場所を成り立たせていこうとする試みもなされている。ただ、徐々に公衆衛生意識が強まっていますから、今後どうなるのかがスタッフもメンバーもわからずに混乱しているのが現状です。

 (※精神科デイケア うつや統合失調症など精神障害のある人の社会生活機能の回復を目的として、創作活動や社会生活技能訓練などさまざまなプログラムが行われる通所施設で、1日6時間の実施が基本)

 ――東畑さんは昨年出版された「居るのはつらいよ」で、ご自身が勤務した精神科デイケアでの経験を基に、そこに集う人々の姿をフィクションで描きました。その中で「『ただ、いる、だけ』は、効率性や生産性を求める会計の声とひどく相性が悪い」「無意味に見えるものこそが、生きづらい僕らの隠れ家として機能していた」と書いています。感染防止のために、明確な目的や合理性のない居場所が社会から失われていく様を見ながら、その一節を思い出していました。

 ◆人と一緒にただいるということを、あの本では善として描いています。それは、患者が多様な社会関係の中で回復していく道筋を作ろうというメンタルヘルス業界の大きな潮流や、当事者が当事者同士で支え合う…

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