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聖地「御嶽」を旅する

ステイホームで旅(3)「口元御嶽」(沖縄県・宮古島) 森の奥で見つけた青い香炉

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宮古本島(手前)と伊良部島を結ぶ伊良部大橋=沖縄県宮古島市で2015年11月、伊藤和史撮影
宮古本島(手前)と伊良部島を結ぶ伊良部大橋=沖縄県宮古島市で2015年11月、伊藤和史撮影

 家にいて、見たい景色や行きたい場所への想像をめぐらす「ステイホームで旅」。実際に出かけるのは、新型コロナウイルス禍の終息後ということにして……。第3回は、沖縄県・宮古島の離島の一つ、伊良部島の御嶽(うたき)。森に立ち入ってみたら、足が前に進まなくなってしまった。【伊藤和史、写真も】

砂浜から森の奥へ

 2015年、伊良部島と宮古本島との間に長大な橋が完成した。初めて訪れたのは、まだ船で渡らねばならない頃だった。

 島の南岸に、渡口(とぐち)の浜というきれいなビーチがある。宮古島の御嶽巡礼のバイブル的存在である「平良(ひらら)市史・御嶽編」を頼りに、ビーチの近くを歩いていた。「口元(フツムト)御嶽」という聖地があるはずなのだが、どこなのか、よくわからない。

 よほどの大御嶽か、観光ルートでもない限り、御嶽の所在を示す看板や目印などはないところがほとんどだ。ここも、空と海と砂と森が見えるだけだ。

 それでも、よく注意して何度か行き来していたら、砂浜の上に森の奥へと続く小道の入り口らしきものがある、と思えた。

 たどっていくと、薄明かりの中で、一点だけがまぶしく光っていた。目をこらすと、巨樹が見えてくる。盛られた白砂だけが木漏れ日に照らされている。この空間はまさに御嶽であって、口元御嶽にたどりついたのだとわかった。

 白砂の山に、いくつもの青い香炉が置かれているのも見えてきた。しかし、なぜか、これ以上入るのはためらわれた。

御嶽の名称は日本本土にも

 漢字で見ると、「御嶽」の2文字はいかにもいかめしい感じがする。御嶽という名称については、古来の山岳宗教と仏教が習合した本土の修験道の影響が指摘されている。吉成直樹・元法政大沖縄文化研究所教授はその点を強調する。民俗学者の谷川健一も本土の影響を重視した。

 本土でいう御嶽(御岳)とは山の美称である一方、この呼び名を固有名詞とする山も多い。14年に噴火した木曽の御嶽(おんたけ)山(3067メートル)や、東京都多摩地域の御岳(みたけ)山(929メ…

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