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文学に陰あり

井上靖「通夜の客」 鳥取の山奥で愛情3年 /島根

 <新津よ、あなたは何を言いたかったの。私にだけこっそりと何を仰言(おっしゃ)りたかったの。新津よ>

 男と女はどうしようもない。思い合い、こじれる。理屈はない。だから小説の出番だ。日本を代表する作家、井上靖(1907~91年)が、若い女の中年男への純愛を格調高く描いたのが「通夜の客」だ。1949年12月、「別冊文芸春秋」に発表した長めの短編である。「天平の甍(いらか)」「敦煌(とんこう)」「孔子」といった雄渾(ゆうこん)な歴史小説をはじめ幅広いジャンルで山脈を成す井上文学の中にあって、ひっそりと、しかし蛍のように妖しい光を放つ。それは生命の輝きである。

 「新津」は「B新聞社」で上海支局長や東亜部長を歴任した記者だった。45年の日本の敗戦と同時に職を辞し、妻と子を東京の自宅に残して鳥取県の山奥に引っ込んだ。晴耕雨読の生活を3年送って東京に戻ってきたが、元同僚と酒を飲んで倒れ、急逝してしまう。享年42。

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