「炎上」はなぜ起きたのか 元ウエディングプランナーの苦しみ ネット社会の労働問題を問う
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会社の誤った説明と対応の遅れが、インターネット上に自分の名前をさらされて中傷を受ける「炎上」を招いた――。今年2月、元ウエディングプランナーの女性が、勤務していた運営会社に対して名誉回復を図る謝罪広告の掲載などを求める裁判を仙台地裁に起こした。会社側の対応は、労働災害が起きた時に問題となる「安全配慮義務違反」にあたると訴えており、代理人弁護士は「ネット社会特有の労働問題として提起したい」と話している。【仙台支局・滝沢一誠】
結婚式でトラブルが相次ぐ
提訴したのは仙台市内のホテル「メルパルク仙台」で勤務していた30代女性。運営するメルパルク(東京都)を相手取り、慰謝料など330万円の支払いと、ホームページへの謝罪広告掲載を求めている。
訴状などによると、不手際があったのは2019年6月に同ホテルで開かれた結婚式。1日1組の条件で契約したのに別の式も開かれた▽式中に新婦の旧姓を呼ばないことを約束したのに旧姓で呼ばれた▽引き出物の中に原価が書かれた発注票があった▽希望した招待状のデザインの発注期限が切れて使用できなかった――などの問題が起きた。
女性の担当は新規顧客の受け付けのみで、その後の具体的な打ち合わせは同僚の男性に引き継いでいた。しかし、同僚の男性は「結婚式を台無しにされた」として説明を求めた夫妻に対して事実とは異なる説明をして、トラブルの責任の多くが女性にあるように誤解させたという。さらに、「女性に会わせてほしい」と申し出た夫妻に女性が面会を拒んでいるように受け取れる説明をして、同席していた上司も誤った内容をたださなかった、としている。
炎上で身の危険を感じる事態に
こうした説明を夫妻から聞いた結婚式の出席者がネット上で内容を伝えた後、女性は挙式の準備を全面的に担当してトラブルを起こした「張本人」とみなされて、真偽が入り交じった情報が拡散されていった。問題はワイドショーや週刊誌でも取り上げられ、女性は直接謝罪の場に現れないとして、批判の声はネットの外にまで及んだ。
騒動が収まらない中、会社側が記者会見などで経緯を説明する機会を設けることはなかった。「一部のインターネットの書き込みにより、婚礼サービスを利用された皆様や多くの方々にご心配をおかけしておりますことをおわび申し上げます」という文書をホームページに掲載したものの、「ネットの投稿が悪い」ともとれる内容…
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