新型コロナウイルスの感染が拡大する中、宇都宮市に伝わる無病息災の縁起物「黄ぶな」が、注目を集めている。グッズをまとめ買いする人や、黄ぶなのイラストをSNS(ネット交流サービス)で発信する「黄ぶな運動」も始まった。市民にとっては慣れ親しんだ黄ぶなが、改めて注目されているのはなぜか。宇都宮在住24年の記者が背景を探った。【渡辺佳奈子】
黄ぶなの張り子など宇都宮市の伝統工芸品を扱う「ふくべ洞」。4月上旬、店を訪ねると、市内の団体職員の男性(60)が黄ぶなの携帯ストラップを10個まとめ買いしていた。妻から頼まれ静岡県の親戚に送るという。「コロナになったら大変だからね。家には黄ぶなの張り子も飾ってあるよ」と、職場に戻っていった。同店店主で、市内唯一の黄ぶなの張り子職人、小川昌信さん(77)は「いつもは正月くらいしか売れないのに」と驚く。
宇都宮市には「黄ぶな」にまつわる伝説がある。昔、天然痘が流行し多くの病人が出たときに、宇都宮市の中心部を流れる田川で釣り上げた黄色いフナを子どもに食べさせたところ、たちまち病気が治ったという。以来、市民は「黄ぶな」を玄関や神棚に飾り無病息災を祈ってきた。
私の家にも昔から黄ぶなの土鈴がテレビ棚に飾られている。「下野かるた」の箱に描かれ、幼い頃からなんとなく身近にあったものだが、伝説について詳しく知ったのは最近になってからだ。改めて街を眺めてみると、黄ぶながデザインされた市内循環バスが街中を走っていたり、看板や店舗名に「黄ぶな」を使ったお店があったり。黄色い体に赤い顔、…
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