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新型コロナに「アビガン」は使えない? 注目の治療薬が普及しない理由

新型コロナウイルスへの治療で有望視されている新型インフルエンザ治療薬「アビガン」の錠剤=富士フイルム提供

 新型コロナウイルスに効く薬はないのか――。いくつかの既存の薬物で患者への投与が試みられているが、中でも大きな期待を集めているのが新型インフルエンザ治療薬「アビガン」だ。安倍晋三首相も記者会見でその有効性に触れ、政府として備蓄や増産を推進、海外数十カ国への供与も決まった。しかし、国内では、新型コロナウイルスへの有効性と患者の安全性を確かめる治験が完了しておらず、希望する全ての患者が投与される状況ではない。一部の学者や医師は「使用を拡大すべきだ」と声を上げるが、どのようにしたら今の日本で使えるのか。医療関係者に話を聞くと、いくつもの課題と、その背景が見えてきた。【松本光樹】

 アビガンは富士フイルム富山化学(東京都)と白木公康・千里金蘭大副学長が開発した新型インフルエンザの治療薬。2014年3月に国内での製造販売が承認された。

 インフルエンザウイルスは、遺伝情報をDNA(デオキシリボ核酸)ではなくRNA(リボ核酸)の形で持つRNAウイルスと呼ばれる。細胞内に侵入したウイルスは、RNAをコピーして増殖する。アビガンはRNAの増殖に必要な「部品」に似た構造をしており、部品と間違えてアビガンが取り込まれると、RNAのコピーができなくなり増殖が止まる。

 新型コロナウイルスもRNAウイルスなので、同様の作用が期待されている。中国では臨床研究が深圳市や武漢市などで実施され、有効性が確認されている。このうち深圳市の病院で80人の患者を対象に行われた試験では、アビガンを投与しなかった人たちは62%の改善にとどまったが、投与したグループは91%だった。

 そもそもアビガンは、新型インフルエンザの治療薬であり、国内では新型コロナウイルスへの使用は医療保険の適用外だ。保険適用されるには治験で有効性と安全性が確認されなければならない。富士フイルムは3月31日から治験を始め、6月末に終了する予定。その後、申請や承認の手続きを経て初めて広く使えるようになるが、実際に一般で使用が始まる時期は「数カ月後」から「1、2年先」まで諸説ある。

 ただ、アビガンは妊婦に投与すると胎児が奇形になってしまう可能性があるとされており、国内での製造販売の承認は、新型インフルエンザが流行し、他に治療法がない場合、厚生労働相の要請を受けて初めて製造できるという条件付きだった。今回は新型インフルエンザではないが、厚労相が要請し、3月上旬から製造を開始した。富士フイルムは4月15日に増産を決定し、9月には月約30万人分の生産を目指す。政府は200万人分の備蓄を目指すほか、海外への供与も打ち出し、活用に向け大きくかじを切った。

 複数の患者にアビガンを投与した西日本の感染症指定医療機関の医師は「インフルエンザに対するインフルエンザ治療薬ほどの効果は得られなかった」と前置きしつつ、「新型コロナで重症になりそうな肺炎の場合、発熱、せきや呼吸困難が徐々に改善する患者が3分の2程度いた」と効果を実感している。

 では、今の日本でどうすればアビガンを使えるのか。平時に流通しているものではないため、薬の価格が決まっておらず、流通ルートも確立されていない。そのため、医療保険を使わない「自由診療」で使おうとしても、一般の医療機関では入手することは不可能だ。東京都足立区内にある病院の医師は「薬剤部にアビガンを入手しろと依頼したら、『流通ルートがないので無理』と言われた」という。

 治験の場合、条件や人数、実施している医療機関の方針などがあり、希望通りに参加できるかは不明。しかし、もう一つ道がある。治験より規制の緩い「観察研究」という方…

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