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内戦下のイエメン 「最悪の人道危機」、コロナ拡大ならより深刻に

病院のベッドで栄養補給を待つ栄養失調状態の子ども=イエメンの首都サヌアで2019年11月、AP

 新型コロナウイルスによる感染が広がる中、とりわけ被害拡大を恐れている国がある。中東の小国イエメンだ。2015年から内戦が続き、推計で10万人以上が犠牲に。長引く内戦とサウジアラビア軍による空爆で、医療・衛生環境も悪化し、これまでコレラなど深刻な感染症被害に見舞われている。「最悪の人道危機」と呼ばれ、新たな感染症の脅威も迫るが、国際社会の関心は高くない。「私たちがこのまま沈黙し、何もしなければイエメン国民を愚弄(ぐろう)することと同じ」。こう訴えるアジア経済研究所の佐藤寛・上席主任調査研究員と考えたい。【鵜塚健】

内戦で衛生環境が悪化、コレラもまん延

 アラビア半島南西にあるイエメンは、紀元前に「シバの女王」が統治したとされ、古代アラブの中心として栄えた。しかし、近年は苦難が続く。国連によると、イエメンでは長引く内戦の影響で、25万人が飢餓状態にあり、国民の8割にあたる約2410万人が人道的支援を必要としている。

 戦闘による直接の犠牲に加え、深刻なのが感染症被害だ。多くの医療施設が破壊され、医療器具も不足。水道・汚水処理施設などの破壊で衛生環境が悪化し、17年には100万人がコレラに感染したとされる。デング熱やジフテリアの流行にも悩まされてきた。

 新型コロナについては、4月10日に同国東部の港町で高齢男性による初感染が確認され、5月7日現在で、25人が感染し、5人が死亡した(米ジョンズ・ホプキンズ大集計)。佐藤さんは「感染症予防の基本中の基本である、安全な水すらない。既に深刻な状況だが、さらにコロナが広がれば完全にアウトです」と懸念する。

 民間の人道調査機関ACAPSのリポートによると、イエメンでは約半数の医療施設が機能せず、コロナ感染の検査ができる施設は2カ所だけ。1万人あたりの医療従事者は国連の最低基準(41人)を大きく下回る10人しかいない。仮にコロナ感染が広がれば、医療環境の悪さと人口過密、食糧不足による免疫力低下で、致死率が高まるのは必至とされる。

続く対立、先行き見通せず

 南北で分裂していたイエメンは1990年に「イエメン共和国」に統一。サレハ大統領が長期にわたり統治していたが、11年、チュニジアやエジプトに続いて民主化運動「アラブの春」が起こり、サレハ氏が退陣に追い込まれた。後継のハディ大統領による暫定政権ができ、新憲法の準備も進んでいたが、安定へのレールはそこで途切れた。「サレハという『重し』が取れたことで、北部で力を持っていた反体制フーシ派が台頭し、暫定政権は首都から追放されたのです。暫定政権側からは、さらに南部暫定評議会が分離し、三つどもえの対立になりました」

 情勢悪化に拍車をかけたのが、隣国サウジアラビアの介入だ。サウジはフーシ派の背後に宿敵イランがいると警戒し、15年3月以降、サウジ主導の連合軍はフーシ派地域に2万回以上の空爆を繰り返した。学校や病院、結婚式や葬式の場にまで爆弾を落とし、多くの市民が犠牲になった。これに対し、フーシ派はドローンや巡航ミサイルで反撃した。

 佐藤さんは「同じアラブの仲間の国に対し、これだけ長期にわたり…

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鵜塚健

1993年入社。大阪社会部、外信部、テヘラン支局長、京都支局次長などを経て2019年5月から統合デジタル取材センター副部長。3年半のイラン生活で中東料理にはまる。共著に「縦並び社会」(毎日新聞社)、単著に「イランの野望~浮上するシーア派大国」(集英社)。法政大大学院グローバル地域研究所特任研究員。

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