メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

余録

ナチス・ドイツの迫害を逃れて…

[PR]

 ナチス・ドイツの迫害を逃れて亡命生活を送った劇作家のブレヒトは、こう詩につづった。<こんな時代に木々について語るなんて犯罪のようなものだ。それは恐怖や悪を前に沈黙するのと変わらない>▲スーダンが舞台の映画「ようこそ、革命シネマへ」の英題「トーキング・アバウト・ツリーズ」はこの詩の一節にちなむ。1989年から30年間、軍事独裁政権が続き、表現の自由は失われていた。映画産業が崩壊した祖国で、かつて弾圧された映画監督ら4人が映画館を取り戻そうと奮闘するドキュメンタリーだ▲70~80年代には、すぐれた作品が多く製作され、全土に70以上の映画館があったという。スハイブ・ガスメルバリ監督は、彼らのユーモアと機知にあふれたやりとりを通して、社会の息苦しさをあぶり出す▲今月初めが公開日だった。時が違えば映画の中の話で終わっていただろうが、「映画の死」が現実味を帯びるコロナ禍の日本である。ウイルスが経済を壊し、表現の場を奪う。映画製作は停滞し、映画館も休館を余儀なくされた▲懸念されるのは経営規模の小さいミニシアターへの影響だ。全スクリーン数に占める割合こそ1割程度だが、映画の多様性に欠かせない。オンライン配信の加速でさらに危機感が募る▲芸術文化への公的支援が十分に行き届かない中、映画監督らが呼びかけた基金への寄付は1億8000万円を超えた。ブレヒトは暗い時代を生きていることを嘆いたが、人々の支え合いの思いは揺らいでいない。

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 俳優の伊藤健太郎容疑者逮捕 ひき逃げの疑い、女性重傷「離れたのは間違いない」

  2. 「エビ中」安本彩花さん、悪性リンパ腫治療で当面の間休養

  3. 伊藤健太郎容疑者、目撃者に説得され事故現場に戻る 所属事務所は「おわび」

  4. 「限界だった」たった1人の介護の果て なぜ22歳の孫は祖母を手にかけたのか

  5. 議場ではなく「劇場」にいるかと… 新人総理番が見た「代表質問」

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです