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新たな経済秩序、国際関係、暮らし方の早急な模索を 山極寿一・京大学長

山極寿一・京都大学長=京都大学で2019年5月7日、望月亮一撮影

 新型コロナウイルスの感染拡大が世界を覆っている。ウイルスの脅威で危機にさらされた現代社会をどう見るのか。霊長類・人類学者で、ゴリラ研究で世界的に知られる山極寿一・京都大学長(68)に寄稿してもらった。

 これほどまでに新型コロナウイルスの影響が広がると誰が予想しただろうか。中国の武漢で発生した時は、世界でも日本でもまだ楽観する見方が多かった。しかし、もはやどの国でも緊急事態宣言は必至という勢いで感染者も死者も膨大な数に上っている。エイズ、エボラ出血熱、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)、ジカ熱など、この数十年ウイルスによる新しい感染症が増加しているにもかかわらず、今回の事態に大きく混乱してしまった原因は何なのか。更に、たとえこの感染症が終結しても、もはやこれまでの状態に簡単に復帰できるとは思えない。強固な感染症対策を打ち立てるとともに、新たな経済秩序、国際関係、暮らし方を早急に考えていく必要がある。

頭に浮かんだSF映画「猿の惑星」

 感染の拡大が危惧され始めた時、私の頭に浮かんだのはカミュの「ペスト」でも小松左京の「復活の日」でもなく、「猿の惑星」というSF映画だった。1968年に第1作が公開されて人気を博し、その後続編が次々に製作された。米国から打ち上げられた宇宙船が6カ月の飛行を経て地球へ帰還する。その時、地球時間は700年後の2673年になっている。4人の宇宙飛行士が出くわしたのは、人間の言葉をしゃべって文明生活を送る類人猿(オランウータン、ゴリラ、チンパンジー)と、言葉を失って飼育されている人間たちだった。なぜそんなことになったのかは、いくつかの続編を経て明らかになる。感染症の新薬を開発するため実験用に飼われていたオスのチンパンジーがある時、変異を起こして人間の言葉をしゃべるようになる。彼は策略を巡らして同じような境遇にある類人猿たちを解放し、自治区を設ける。その後、人間の世界ではあるウイルスによる感染症が急速に広がり、人類は絶滅の危機にひんする。わずかに生き残った人間たちは言葉がしゃべれなくなり、この感染症に抵抗力を持っていた類人猿たちに支配されるようになったのである。

原生林開発でウィルスの感染経路広げる

 実は、ウイルス感染症は野生動物に由来する。中でもコウモリが元の感染源だとする説が多く、SARSはコウモリのウイルスがハクビシンを経て人へ、MERSもコウモリからラクダを経て人へ、という感染経路が推測されている。今回の新型コロナウイルスも、コウモリやセンザンコウから見つかったウイルスに遺伝子配列が似ているという報告がある。武漢では市場で野生動物の販売が行われ、ここを通してコウモリから、あるいはコウモリからセンザンコウを経由して人に感染したのではないか、という臆測も流れている。コウモリは洞窟や樹上に集合して眠る習性があり、ウイルスに感染しやすいホスト(宿主)である。すでにウイルスとの接触が長く、感染しても発症することはない。感染を繰り返すうちにウイルスが変異し…

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