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余録

大正時代の旧制高校の…

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 大正時代の旧制高校の受験生の苦悩を描いて学生の評判となった久米正雄(くめ・まさお)の短編「受験生の手記」に、旧制一高(現・東大教養学部)の入試当日の場面がある。主人公は朝7時には家を出て、試験場に着いた▲「時間がまだ早いにも拘(かかわ)らず、校庭には多くの受験生が集まっていた。時計台を掠(かす)めている朝の日は、さすがにもう暑かった。受験生たちは夏帽を浅く翳(かざ)して、桜の木陰に集い寄った」。そう、この頃の入試は7月に行われたのである▲当時の旧制高校と大学は9月入学で、4月に変わったのは大正時代の後半からである。小、中学校、師範学校などに合わせたのだが、それらも4月入学が定着したのは明治中ごろという。入学式と桜は学校の最初からの伝統ではない▲コロナ禍での休校が長引くなか、学校の入学や新学期を9月に移行すべきだとの提案が相次いでいる。国民民主党や日本維新の会など野党、宮城県や大阪府の知事らの発言もあり、萩生田光一(はぎうだ・こういち)文部科学相も「一つの選択肢」と述べた▲提言の背景には地域ごとにばらばらになった新学期の「仕切り直し」の要請がある。さらに9月入学の欧米や中露に合わせた秋入学への移行は、留学生交換や教員人事などでの教育グローバル化の課題として以前から求められていた▲もちろん「この混乱のさなかに決めることか」「うちは、あと4カ月の休校は無理」など異論も続出だろう。だが学校に限らず、従来の常識を脱した論議も交わさねばならない「コロナ後」社会への道筋である。

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