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幻影のふるさと

江戸川乱歩 人と作品/1 1923(大正12)年「二銭銅貨」 暗号解読、しかし実は /三重

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、不要不急の外出の自粛が求められている今年のゴールデンウイーク。家にいる時間が長くなるこの機会に、名張市出身の推理小説作家、江戸川乱歩の作品を楽しんでみませんか。乱歩作品などの読書会で講師を務める上田豊太さんの案内でその生涯と珠玉のミステリーをご賞味ください。

 江戸川乱歩は1894(明治27)年に名賀郡名張町(当時)で生まれます。1953(昭和28)年に発表された「ふるさと発見記」には、「父はそこで津市から母を迎え、明治二十七年に私が生れたが、生れると間もなく、父は亀山町の郡役所に転勤になったから、この生れ故郷の名張町も、私は全く見知っていないわけである」と書かれています。乱歩の最も古い記憶は、亀山町の石灯籠(どうろう)の記憶だと、自ら「彼」という随筆で述べています。名張の記憶はなかったのです。しかし、記憶にないからといって、生まれ故郷をおろそかにしていたわけではなく、何度か彼は名張を訪れ、名張のことを記しています。

 記憶にはないけれど、確固として存在する「ふるさと」。それはまるで、乱歩が好んだ「幻影」という言葉を付けて、「幻影のふるさと」と呼ぶのがふさわしいのかもしれません。この随筆では、乱歩の作品を基に、乱歩の人生と、彼の「幻影のふるさと」を考えてみたいと思います。また、ここでいう「ふるさと」とは、「心のよりどころ」という意味も含みます。

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