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コロナショックの現場から

4月末に閉店したライブハウスの3年半 マネジャー「音楽は不要不急じゃない」

ライブハウスの思い出を語る「CANOPUS」の佐藤雄輝マネジャー=東京都豊島区で2020年4月19日午後8時14分、塩田彩撮影

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、大きな影響を受けているのが音楽業界だ。中でもライブハウスやクラブは、「密閉・密集・密接」の3密となる場として、早い段階から客足が遠のいた。そんな中、4月末で閉店したのが東京都豊島区のライブハウス「池袋CANOPUS(カノープス)」だ。現場の責任者として開店当時から関わってきたマネジャーの佐藤雄輝さん(31)に経緯を聞いた。【塩田彩/統合デジタル取材センター】

「純粋に音楽が好きなだけなのに…」

 ――新型コロナウイルスの感染拡大は、ライブハウス関係者にどのような影響を与えていますか。

 ◆アーティストは音楽だけでは食べていけないのでアルバイトをして生計を立てている人が多いのですが、そのアルバイトができず生活苦になっているという話をたくさん聞いています。ライブなどのイベントを企画する「イベンター」と呼ばれる人たちは、既に企画済みのライブがすべてキャンセルになって、「ハコ代(会場費)」の費用負担だけが残ったといいます。

 大阪府内のライブハウスで集団感染が発生したという報道が続いた3月上旬ごろから、「周りから白い目で見られる」という話をアーティスト数人から聞きました。ギターを背負っているだけで、新型コロナウイルスに感染していると思うのか、「近づいてほしくない」というようなことを実際に言われた人もいました。こんな時だからこそ音楽シーンを盛り上げたいと思っても、SNSでライブの告知をするだけで知らない人から批判される。でも、僕たちはただ純粋に音楽が好きなだけで、感染を広めたいわけではないんです。生活が苦しい中みんな必死に自粛しています。そのことを世間の人たちにはわかっていただきたいと思っています。

たとえ収束しても…不安は尽きない

 ――「カノープス」は4月末で閉店だそうですね。経緯を聞かせてください。

 ◆2月下旬から客足が遠のき、出演者が出演をキャンセルすることが増えました。3月に入ってすぐ、(店を運営する)オーナーと「このままだとやばいね」という話をしました。結局3月は予定していたイベントがほとんどキャンセルになり、3月末ごろに閉店を決めました。

 店舗の売り上げは、毎月250万~300万円程度ですが、2月の売り上げは半分くらいまで落ち、3月はイベントがほとんどなくなって、収入は7~8割減。4月はまったくイベントが入ってないので収入は十数万円です。4月の収入のほとんどは出演者やイベンターからのキャンセル料でした。

 毎月の支出は、店舗の賃料約60万円と光熱費などの維持費に約10万円。削れる支出は人件費くらいですが、ライブイベントを開けばそれだけ人手もかかります。閉店は悔しいし、今まで出演してくれたアーティストの方には申し訳ない気持ちでいっぱいですが、感染がいつ収束するのかも見えない中で、閉めるなら早いに越したことはない、と考え決断しました。

 ――政府の中小事業者向け助成金の利用などは検討しましたか。

 ◆はい。無利子無担保の融資を検討しましたが、借金であることに変わりはなく、いつかは返さなくてはいけないんですよね。感染が収束したとしても、これだけライブハウスの印象が悪くなった中でアーティストやお客さんが戻ってきてくれるのか、信頼がどこまで回復できるのかと考えると、厳しい状況は続きます。これからも体力のないライブハウスはどんどんつぶれていくのではないかと思います。東京都の「感染拡大防止協力金」の50万円も、ひと月の賃料にも満たない額です。

 ――「たられば」ですが、どんな支援があれば、閉店せずに済んだと思いますか。

 ◆明確な補助金の額というよりも、「続けられそう」「頑張れそう」という希望のようなものがなかったことが大きいです。「これ、どうなっていくんだろう」という不安がずっとありました。東京都が協力金を出すと決めたのも最近でしたし、もっと早い段階で、少しでも踏ん張っていこうと思えるような政策やトップのメッセージあればよかったと思います。

 発言一言でもいいんです。僕は政治にあまり興味はなかったのですが、こういう状況になって首相会見などを見るようになりました。会見を見て、自粛の必要性はわかる。何よりも命を守ることが大切というのもわかる。…

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