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社説

コロナ後の世界 国際協調こそ乗り切る道

握手するドナルド・トランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席=AP

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 新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)は、当たり前に思われた現代国家や国際関係のあり方を様変わりさせた。国境や交通路が遮断され、人々の行動の自由も大きく制限された。

 「コロナ・パンデミックは世界秩序を恒久的に変えるだろう」。キッシンジャー元米国務長官は米紙への寄稿で世界史的な意味を持つ変化が起きると予測した。

 より良い方向に変わるならいいが、対立や緊張が高まる危険性もある。今こそ協調体制を維持するために国際社会全体で議論を深める必要がある。

 感染症はこれまでも世界史の転換点に人類を脅かしてきた。中世に欧州で流行したペストは世界帝国化したモンゴルを通じてもたらされたといわれる。コロンブスの新大陸到達では天然痘など旧大陸の感染症によって新大陸の多くの先住民が死亡し、旧大陸にも梅毒など新大陸の感染症が伝わった。

米中対立激化の危険性

 コロナ禍はどんな意味を持つのか。経済のグローバル化の行方が焦点だ。世界的な相互依存関係が深まり、人やモノの世界的往来が飛躍的に拡大する中で起きたからだ。「世界の工場」の中国から世界に感染が急速に広がったのはまさにグローバル化の帰結だ。

 「自国優先主義」を掲げる米国のトランプ政権の誕生や英国の欧州連合(EU)離脱などグローバル化への反動はすでに起きていた。コロナ禍がその流れを加速させる可能性もある。

 戦後の国際社会を主導してきた米国の影響力が弱まり、「リーダー不在」が指摘される中で世界的な危機が生まれたことも大きい。米国は世界最多の感染者、死者を出す一方で、世界保健機関(WHO)への資金拠出を一時停止した。自らリーダー役を放棄したともいえる。

 コロナ禍の前から悪化していた米中関係の行方も懸念される。トランプ政権は責任回避の思惑もあり、中国が感染拡大の初期に情報を隠蔽(いんぺい)したなどと批判を強めている。米国民の中国に対するイメージも悪化した。

 一足先に感染拡大を抑えた中国が世界的な影響力を増すことへの警戒感も強い。対立がさらに深刻化すれば、「新冷戦」を生むリスクがある。

 中国も問題を抱える。世界経済全体の回復がないまま、単独で経済を浮揚させることは容易ではない。情報伝達を遅らせる隠蔽体質など強権体制の問題点が明らかになり、国内にも習近平体制への批判がくすぶる。

 広域経済圏構想「一帯一路」に沿った医療援助を進め、東シナ海、南シナ海での活動を続けるなど独り勝ちを狙うような動きを見せていることには世界的な批判も高まっている。

 米中の対立が続けば、国際社会が足並みをそろえて途上国への支援を進めることが困難になる。途上国で感染拡大が続けば、世界全体での収束にはつながらない。

 米ハーバード大のナイ教授は途上国からの第2波、第3波の流行の可能性を考え、米中は自国の利益のためにも人道的な意味でも協力する必要があると提唱する。

民主主義に新たな挑戦

 コロナ禍は民主主義にも難題をつきつけた。感染拡大防止には個人の権利を制限することも必要になるからだ。民主主義が脆弱(ぜいじゃく)な東欧では今回の危機を口実に政権が権力強化を図る動きもある。

 スマホや人工知能(AI)などを活用して感染源の特定を進めている国も多いが、AIは中国のように国民の監視強化にも利用できる。巨大IT企業にさらにデータが集まることにもつながる。

 一方、強権的指導者の多くがコロナ対策に苦戦する中、台湾やドイツ、ニュージーランドなどの女性リーダーが評価されている。女性が評価される成熟した社会がうまく機能したとすれば、将来を考えるヒントになりうるだろう。

 多くの国が国内対策で巨額の財政支出を迫られ、経済回復も容易ではない。長期化も予想されるコロナとの闘いを収束させ、世界を繁栄の軌道に戻すには国際協調で乗り切る以外の道は考えにくい。

 自由貿易体制や地域の安定の下で繁栄を享受してきた日本にとって選択の幅は広くはない。中国に自制を求め、米国とも意思疎通を重ねながら、国際協調体制の再構築を目指すのが日本の役割ではないか。共通の利益を持つ欧州やアジア諸国とも協力できるはずだ。

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